アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
ニヤリと笑う猫の瞳
-
「ねぇねぇ、幸輝クンってどーてー?」
夕方の教室、開け放たれた窓から吹き込む風に、ブリーチをしたためか少し傷んだ、色素の薄い髪がふわふわと揺れる。机に突っ伏した姿勢で気だるげに、少しにやつきながら、こちらを上目遣いに見つめてくるそいつを、手に持っている本に集中しているフリをして無視する。
「ねぇねぇ、幸輝クンってどーてー?」
もう一度、全く同じ質問をされる。答えるまで聞き続けるつもりだろうか。と言っても、何度聞かれたところで答えるつもりは無いが。
「オレはねぇ、どーてーじゃないよぉ」
「……しってる」
「あは、ちゃんと聞こえてんじゃん」
ウケるーと言いながらカラカラ笑うこいつは、猫のようだ。気分屋で、擦り寄ってきたかと思えば、気分じゃないと離れていく。今も笑っていたかと思えばスっと目を細め、先程のニヤリと言う表情を取り戻す。
「で、幸輝クンはどーてーなの?」
「松田、それ答える必要あるか?」
目の前の金色毛玉が気になって全く内容の頭に入ってこない小説を閉じた。そいつに向き直り目線を合わせると、酷く不機嫌そうな顔をする。
「松田、じゃなくて淳って呼んでよ、幸輝クン」
は?そこかよ。表情はコロコロ変わるから分かりやすいかと思えば、実際何を考えているのかさっぱり分からない。
「はいはい。答える必要は無いな、松田」
不意に立ち上がった松田はユラりとこちらに歩いてくる。と言っても先程までも机1つ分の距離しかなく、さほど時間はかからない。そして松田は、俺の目の前にあった机を退けると、何を思ったか俺の膝の上に跨った。
緩く首に回される腕。頬を掠めた際に触れた冷たい手と対照的に高い体温。猫のような目を細め、徐々に近づいてくる顔。混乱した頭は動かず、反射的に目を瞑って固まってしまう。
刹那、唇に触れた熱。
「ねぇ、幸輝クン。こんなキスひとつで真っ赤になってるのに、どーてーじゃないわけないよね」
ぺろっと唇を湿らせる赤い舌から、目を逸らせない。
「そんなわけ、ないだろ。驚いただけだ、バカ」
ワイシャツの袖で唇を拭いながら、虚勢を張った。実際、俺は童貞だ。彼女もいた事はあるが、そういう行為に及んではない。しかし今大事なのはそこじゃない。松田は何故か俺が童貞かどうか、そこに関心を持っている。なら答えてしまえば興味を無くしてどこかに行くはず。
「そっかぁ。じゃあ、どーてーじゃない幸輝クンは、ここ、女の子にこんなふうに触られたことあるのかな?」
読みが外れた。先程まで緩やかに首に掛けられていた手が、そっと上半身を這う。いちいちいやらしい触り方で、辿り着いたのは下腹部。服の上とはいえ人に触られたことの無いそこに与えられた刺激に、身体がびくつく。
「あれぇ、ちょっと硬くなってない?あは、オレに欲情してんの?」
「うるせぇ。……てか、ここ教室だろ。誰か来たらどうすんだよ」
「だぁいじょうぶだよ。オレが人の膝の上に座るのなんてよくあることだし。あ、でも、幸輝クンがイッちゃったら臭いでバレちゃうかもねぇ」
膝に座った、酷く色っぽい笑みを浮かべた松田は、頭1つ分くらい俺よりも高い。そんな話をしている間も松田の手は、俺の股間をさすり続けている。
カチャカチャとベルトを外す音が誰もいない教室にひびき、制服のスラックスの前が開かれる。キスをされたあたりからどうもおかしい俺の頭は、人を押さえながら片手で開けれるとかすごいな、などと考え始めていた。
「おっきいなぁ。オレのよりあるんじゃない?」
血が溜まって熱くなったそこに、松田のひんやりとした手が触れる。
気持ちいい
服越しとは比べ物にならない刺激に、誰かにバレまいと必死に声を押し殺す。俺のを扱く松田の手を止めようとするも力が入らず、ただ添えるだけになってしまう。
「ぅあっ……もう、いいだろ!なんのためにこんな……」
今まで感じたことの無い快感に眉根を寄せ、息を荒らげる俺。頭1つ分上から見下ろす松田は、楽しそうに口角を上げながら、彼もまた顔を火照らせ、目を潤ませていた。
「気持ちいいの、幸輝クン?もうイっちゃうのかなぁ。じゃあ最後、舐めてあげるね。逃げたらだめだよ」
ふわりと軽くなる膝。しかし俺自身は松田に握られたまま。
くぷり
どろどろ、というのにふさわしい感覚。あつくて、ぬるぬるしていて、ぴったりと吸い付くような。
あー、とけそう
くちゅくちゅという水音が小気味よく響き、俺の中では出したいという気持ちがどんどん強くなる。
「あっ、、まつだ……でるっ……からっ」
「ほのははいっへいいよぉ」
気づいたら俺は、松田の金色の頭を掴み口の中に精を放っていた。マラソンを走り終えたあとのような心地よい疲労と倦怠感。さっきまで熱に浮かされていたのが嘘のようにクリアになる思考。
「ごちそーさま、幸輝クン」
俺の足元に座る金髪もまた、恍惚の表情を浮かべていた。
「……帰る」
自分が教室でクラスメイト相手に何をしてしまったのか、我に帰った俺は急いで身なりを整え、鞄を掴んだ。
「待って、幸輝クン」
不意に腕を掴まれ、振り返った俺に吹きかけられる香水。それは、松田から香る匂いだった。
「そんなえっちな匂いさせたまま帰ったらだめだよ。あと、これはオレのマーキングねぇ」
「なにがマーキングだ、バカじゃねぇの」
何事も無かったかのように笑う松田に背を向けて、教室を出る。
「ばいばい、幸輝クン。また遊んでねぇ」
そんな脳天気な声が聞こえた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
1 / 1