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「そろそろ君も身を固めた方がいいんじゃないか?」
外科部長と同じ大学出身の俺は、気に入られている。
病院ってのは、出身大学の派閥ってのがあった。
しちめんどくせぇ関係は嫌いだが、部長が勝手に可愛がってくれる分は居心地が良い。
「いえ、わたしはまだまだ世帯を持つほどの人間ではありませんので。」
「妻を迎え、子を成すことで、人はまた成長するんだ。」
一生無理な話だ。
嫁さんは持てない。
俺はゲイなのだから。
「お気持ちは嬉しいのですが、まだまだ技術を磨くことを優先させたいので。どうかお許しください。」
言いながら、気持ちがどんどん冷めていく。
部長の言葉を借りれば、世帯を持たない人はいつまでも半人前だということになる。
好きで結婚しないわけじゃない。
好きで子どもを作らないわけじゃない。
たまたま日本の法律では、同性婚が認められていないだけだ。
そして、まだ日本では同性カップルでは、子どもを養子に迎えることができないだけだ。
都では、同性カップルでも里親として迎えることが出来るように条例を緩和したが、あくまでも里親だ。
山野の戸籍に実子として入れることは出来ない。
つまり、叶えたくても叶えられない問題なのだ。
部長の前でため息をつくわけにはいかない。
山野は、この苦痛に満ちた時間が早く終わらないかと思っていた。
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