アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
side倉敷 理人
-
勢いよく階段を下りていった優真くんは、ダッシュでこの場から去っていった。
いきなりの展開についてこれていない様子の美琴はポカンと口を開けたまま。
僕もさすがの急展開に一生懸命頭を整理する。
...でももしかしたら、この場所で一番今の状況を飲み込めていないのは結城くん自身なのかもしれない。
その証拠に、優真くんの走っていった方向をじいっと見つめる彼の顔は驚愕の色を隠せていない。
そんな彼を見ていてふと抱いた疑問に
(あれ、あれれ...?)
僕は首を傾げる。
そしてずっと僕の口を塞いでいた美琴の手を退けて僕は静かに結城くんの隣へいった。
「優真くん、行っちゃったね」
「あ、はい」
心ここにあらずと言った感じに生返事を返される。
「なんで優真くん怒っちゃったのかな」
「...俺のせいですかね」
ポツリと呟く彼は、何時もと違ってとても素直だ。
これもあの優真くんのおかげなんだろうか。
そう思うと自然と笑みが零れてしまった。
「ふふっ、ふふふふっ」
不謹慎かも知れないけど、目の前の彼がとても人間らしくてたまらない。
「理人さん?」
突然笑い出した僕を怪訝そうに見下げる結城くん。
僕は必死に笑いを堪えながら謝った。
「ねぇ、結城くん。さっき優真くんに言った言葉はどういう意味?」
「さっき、ですか?」
「一番手っ取り早いって言ってたでしょ?」
「あ、あれは..、...何でしょう」
そう呟いた彼は、本当にあの言葉の本質を自分でも理解していないんだろう。
ずっと完璧を演じていた結城くんにこんな弱点があったなんて...。
どうしてもにやけてしまう口元を抑えながら、僕は、僕よりずっと背の高い結城くんと視線をあわせる。
「さっき結城くんが言ったあの言葉は、君の独占欲と嫉妬なんじゃないかな?」
僕の声が結城くんの鼓膜を揺らした瞬間、彼の顔がピクリと歪んだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
56 / 93