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勘違い
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「おいしいよっ、優真」
「あ、ありがと」
時間も時間だったからそんなに凝ったものは作れなかったけど、蛍汰は美味しいと食べてくれる。
恥ずかしさを紛らわすように俯けば、また沈黙が流れた。
「....優真」
コト、と静かに蛍汰が箸をおく。
俺の名前を呼ぶそのトーンが先ほどとは異なることに、無意識に背筋がのびる。
「...俺のこと、怒ってる?」
「え」
「ごめん。怒ってるよね」
「え、あ..その」
怒ってない。今は今朝ほど怒ってない。
冷静になればなるほど、蛍汰のことを怒る気にはなれなくなる。
なのに素直にその言葉が出てこない。
それを彼は何と勘違いしたのか、慌てるように手を振った。
「いや、ごめん、いいんだ。怒ってて当然だから」
「いや、違くて..」
別に怒ってないんだってば。
なのに、言いたいのに言えない。
蛍汰は勘違いに勘違いを重ねていく。
「朝は本当にごめんね。昨日もごめん」
「あ、いや...、うん」
「今、俺色々考えてて、その答えが出たら言うから..そしたら多分優真にも納得して貰えると思うんだ」
「...?考え?」
「うん。だからもうちょっと待って。俺のこと許せないかもしれないけど、もうちょっと待って」
「え、あ、いや..その、....わかった」
な、なんか怒ってないよって言えない雰囲気。
許す許さないの問題じゃなくて、もうそんなに気にしてないんだ。
...多分、俺は自分で思うよりもきっと蛍汰に甘いんだ。
「ごめんね、ご飯中にこんな話しして」
「う、ううん」
「さ、ご飯たべよっ」
にこりと微笑んだ彼は、再び箸を持つ。
結局、もうその話はすることもなくその日は何となく気まずいままに終わった。
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