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帰路の途中
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昇降口で靴を履き替え、美琴に見つかる前にそそくさと校門を出る。
その間も頭の中を支配するのは優真のことばかり。
彼になんと言えばいいのか、どう接せればいいのか分からないのに、彼と離れているのが嫌だ。
気まずくても、嫌われても彼の隣にいたいと願ってしまう。
こんな風に思うのも、今まで生きてきて初めてのことだった。
「...やっぱり俺は、好きなんだろうか」
優真のことが、好きなんだろうか。
恋だ何だと騒ぐ周りの人たちが、どういう定義をもってその人を好きだと言うのか。
俺のこの感情が、好きだということなのか。
...分からない。
それでも、優真の顔を見れば何か分かる気がして、俺はアパートへと向かう足をはやめる。
そして、目の前の角を曲がればもうアパートにつくというところで聞こえてきた、
「あなた、王子と一緒に住んでるって本当なの?」
女の声。
王子という単語に自然と眉間にシワがよる。
「え、王子?」
困惑したような声が優真だと分かり、眉間によったシワはさらに濃くなった。
「まぁ、一緒に、住んでますね」
「なっ...1年のくせにっ。生意気だとは思わないわけ!?図々しいわよ!」
キンキンと甲高く耳障りな声で叫ぶのは、きっと学校の女子生徒だろう。
こんなところまで来て、優真に文句を言いに来たのか。
...本当にろくなやつがいない。
「今すぐ王子の家から出て行ってよ!」
「そーよっ、よりにも寄って王子の家に住もうなんて...」
「私たちの王子を汚さないでっ」
ヒステリックにしか聞こえない女の声に、戸惑う優真の声。
優真を家から出すつもりなんてないし、俺はお前たちの王子になったつもりもない。
今、ここで俺が出ていけば面倒なことになるかもしれない。
それでも、優真が誰かに傷つけられるのは嫌だ。
彼女たちのせいで、彼が俺から離れるのは嫌だ。
そう思った時、足は自然と前へ進んでいた。
「優真?そんなところで何してるの」
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