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カレシ-2
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別れたとはいえ最近まで彼女はいた。
元カノの都とは結婚も考えていたのもあって、付き合っていた5年は浮気ひとつせず真面目な恋愛をしてきたのだ。
だが時間が経てば経つほど、隣にその子がいるのは当たり前になり、不思議と“恋している”という感覚は薄れていく。
だから、俺にとっては都ではない誰かに恋をしたのは、久しぶりのことだった。
「やっぱいい人達だな」
一織に、根塚と四十万に報告したことを話した。自分が普段過ごしている人たちのことを褒めてもらえるのは純粋に嬉しい。
「人に話すとジワジワ来ない?」
「ジワジワ?」
「ホントに付き合ってんだなーって、実感」
背後から俺を包むようにして抱き締めている一織の腕の力が、ぎゅ、と少し強くなった。
付き合ってから、恋人らしい時間が増えた。それは当たり前のことなのだけれど、なんだか照れ臭かった。付き合いたてのこの感覚が久しぶりすぎて、少し落ち着かない。
だが一織の言う通り、確かに人に話すと現実味が増す。
俺達は、付き合っている。
そして付き合っていることを知っている人達がいる。
胸に込み上げてくるものがあって、いたたまれず俺は小さく頷くことしかできなかった。
一織は俺の首筋に唇を押し当てると、そのまま顔を埋めて呟いた。
「...あー、俺、お前の彼氏なのかー...」
彼氏、かれし、カレシ.....。
頭の中でこだまするその響きに、目眩を起こしそうになった。
「...彼氏、か」
「そ、すごくない?現実なんだぜ、これ」
また腕の力が強くなる。一織の感情が腕を通して伝わってくるようだ。そうやって抱きすくめられて、心地いい体温に甘く溶かされていく。
「ジワジワ来るだろー?」
「...来てる」
な、と小さく笑って、また首筋にキスをした。
ちゅ、ちゅ、と唇を軽く押し当てられて、優しいキスを繰り返される。こそばゆさに身をかためる俺などお構い無しに、首筋を沿って上に這いのぼっていく。やがて耳元にたどり着くと、今度は耳朶をそっと甘噛みされた。身を捩って、「くすぐったい」と訴えたが、すぐにその口を唇で塞がれてしまった。
一織のキスは、やっぱり心地いい。
軽いのも、激しいのも、やらしいのも、どれにしたって心は満たされた。
こんな風なスキンシップは、付き合う前は当然なかった。ただ相性が良くて、適度に欲を満たせて、一緒にいて気が楽な存在。そこに恋だ愛だのといった感情はほとんど見当たらなかった。あるいは互いに気付かないふりをして、押し殺していた。
それが今恋人となって、解放されたのだ。
「なんつー顔晒してんだよ、抱くよ?」
自分が今どんな顔をしてるのかは知らないが、多分、情けないくらいにうっとりと蕩けた顔をしているのだろう。
「抱けよ」
「あらやだ!」
「ハナからそのつもりだったろーが」
一織の首に両腕を回して、肩に顔を埋めた。
もう、病気だな。
欲しくて欲しくてしょうがない。
「...ああ。めちゃくちゃに、抱くつもりだった」
熱を帯びた一織の声色に肌が粟立つほど感じて、期待で胸が高鳴った。
病気なのは俺だけではなかったようだ。
俺は安堵しながら、ゆっくり目を閉じて、一織の体温に身を委ねた。
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