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1.はじまり
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「榊、俺の事抱いていいよ。」
「え…?な、に。」
暗闇の中、静寂の中、すぐ傍に感じる吐息
僕のじゃない熱い温度
僕のじゃない鼓動。
「榊セックスしたことないだろ。
俺はそっち初めてじゃないから…だから挿れて。」
「…は?」
「俺の初めて、榊が貰って。」
するっと僕の服の上を走る擽ったい感覚。
それが彼の手だと認識するよりも先に、僕は──。
「…っはぁ……また、だ。」
またあの夢を見た。
定期的に見るこの夢は
いつも僕の頭の中をくちゃくちゃにする。
あれは中3の修学旅行の夜。
彼の名前は清水柊。
ヒイラっていう少し変わった読み方が印象的で
今も覚えている。
僕みたいな陰キャには一つも関わる理由がないくらい
みんなに囲まれていて、いつも笑顔の同級生だった。
彼は、中学生活が残り1年を切ったタイミングで転校した。
修学旅行の日には既に転校する事をみんなが知っていて
消灯時間を過ぎた後、こっそり送別会をやる…なんて盛り上がっていたんだっけ。
数名の生徒を除き、多くの生徒が参加して
9割9分が先生に捕まった。
僕は参加しなかった数名の中の一人
そして柊君は見つからなかった唯一の人物だ。
生徒と先生の追いかけっこが貸し切り旅館で続く中、
外からコツンと小さく窓を叩く音が聞こえて
窓を開けるとそこには、高い木の上から枝で必死に窓をつつく柊君の姿があった。
運動神経が良かった柊君は、
転校間際の修学旅行で、先生を巻いて僕の寝ている2階の和室に潜り込んだのだ。
僕以外誰もいない部屋で、右の部屋にも左の部屋にも誰もいない静かな空間で
僕は多分初めて、ちゃんと柊君と会話をした。
最初で最後の会話。
「怪我してない?電気付けるよ…。」
「平気!電気付けると隙間から廊下に見えるから見つかる。」
「ちょ、布団…他にも空いてるよ…っ。」
「誰か来たらバレるだろ。」
小さな声で、こそこそ話して
触れた温度を数年経った今も忘れる事が出来なくて。
そして、あのやり取りだ。
僕は柊君の言っていることの意味が分からなくて
いや、わからないわけじゃないけど
冗談に決まってるのに、普段教室の隅で一方的に眺めていた柊君の元気な様子とはまるで違って
僕は
「っ、何言ってるの…いきなり。
そういうの辞めなよ。ちょっと…おかしいよ、柊君。」
柊君を拒絶した──。
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