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腕を引っぱられて
もう片方の手は僕の後頭部に回されて
唇に、ふにゃっと柔らかくて少し湿った何かが触れる。
後ろに倒れる柊君もろとも
僕も緑に囲まれた場所で、柊君の上に覆いかぶさった。
「…え?いっ、ぃいまの……っ。」
「もしかして、キスも初めてだった?」
きっ、ききき……す…?
じゃあさっきの、ふにゃってなったのは
間違って柊君のどこかに触れたんでも、太陽で温かみを増した葉に当たったわけでもなくて…
柊君の…?!?!
「あっははは!榊まじサイッコー。
めっちゃ焦ってんじゃん。」
「…ぁあたりまえ、でしょ…。
ひ…柊君、なんだもん…。」
「えー?これからもっとすげー事するのに?」
「んぐっ…。」
す、すごい事…
想像もつかない、事…。
どうして柊君はそんなに冷静でいられるんだと思う。
…い、いくら僕側で…、そういう事してても…
柊君だって…そっち、は…はじめてのくせに…。
「…もう一個、初めてもらってもいい?」
柊君は、僕の髪の毛に指を絡めて
柔らかな笑みを浮かべる。
「次、榊から…して。」
…?!
酷い、狡い。
柊君が初めてなのは、僕にとって色々と刺激が強すぎる。
僕が地面から手を離したら
僕が腕立てみたいに肘を曲げたら
すぐにでも柊君の身体全部とくっついちゃうっていうのに。
それだけで、僕は今にも心臓が口から飛び出そうなのに。
なのに柊君は、僕が固まってるのを面白そうに見上げて、
挙げ句「だめ?」なんて口パクで聞いてくるんだ。
…ほんとに、困る。
「目…目、閉じてて!」
これ以上近くで目が合うのなんて耐えられない。
「…はいよ。」
またからかわれて、やだって言ってくると思って
言い返す言葉を必死に探っていれば
柊君は驚くほど素直に
静かに、まぶたを伏せた。
薄い二重の線は平行に伸びているし
意外と量が多くて長いまつ毛は、上と下とがぴったり重なっている。
柊君のこんな顔、まじまじと見られる人は
多分そういないんじゃないかなって
ドキドキして、身体に力が入りっぱなしでそろそろ疲れてきたけど
そんな疲れとかも全部忘れて
ほんの少しだけ開いている柔らかな唇に
触れたいと、思って。
柊君の吐息のかかる距離まで近付いた。
その時
カチャンッ
「わっ!」
「ん?」
小さな衝撃で、それまで閉じていた柊君の瞳が開かれる。
視界が急にぼやけて、一瞬にして目の前の柊君の顔はのっぺらぼうになった。
「…ぶふっ。……俺、メガネにキスして欲しいとは頼んでないんだけど…っ、ふっ。」
最悪だぁぁあ〜〜っ。
僕より先にメガネが重力に耐えられなくなるとかありえない…。
雰囲気ぶち壊しだ。
折角…折角、勇気を出したのに。
「さーかき。んな泣きそうな顔するなって。」
「だ…だって…っ。」
「…ふ、ははっ。あーダメだ止まんねえ…っくく。」
恥ずかしい、本当に
恥ずかしすぎるよ僕のばか。
さっきよりも少しだけ近付いたのっぺらぼうが、僕に向かってケラケラと笑う。
そしてひとしきり落ち着いたらしい無地の顔は
あの忌々しいカチャリの音をもう一度立てて
視界が、鮮やかさを取り戻す。
柊君だと認識できるようになった僕の耳に
プラスチックが引っ掛けられて
少しだけ触れた柊君の指は、そのままで。
「…ごめんごめん。
なあ、俺がココ持っててやるからもう一回だけ。」
「………うぅ…。」
もう、なんならいっその事
メガネなんて外しちゃえばいいと思ったのに
そんな僕の考えはあっという間に不可能になった。
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