アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
きゅんと鳴った
-
静は、入学早々の自己紹介で、こう言い放った。
「オレの恋愛対象、男なんで。キショいとか思うヤツは、近づかないでください。と、女の子に興味ないんで、そういうシモの話は参加できません。オレにもタイプってものがあって、男なら誰でも好きになるって訳でもないんで、友情も成立します。あと、見えないところで嫌がらせとかするくらいなら、面と向かって言って。受けて立つから」
きっぱりと言い切った静は、親指を立てて見せた。
その頃の僕は、別に気持ち悪いとは思わなかったが、積極的に仲良くしようともしなかった。
静と仲良くなったのは、入学して少し経った頃。
数学の小テストで1点も取れなかった静は、それが満点になるまで帰さないと居残りをさせられていた。
入学早々、自分はゲイだから、キショいと思うヤツは近づくなと啖呵を切った静は、クラスで少しだけ浮いた存在だった。
小テストを前に、半泣きで居残りしてる静に、僕の胸が……きゅん、とした。
僕は思わず、側の椅子を引き寄せ、声を掛けていた。
「ここは、この方程式だよ」
きゅるんとしたまるで小動物のような、こちらの慈愛を誘う涙目で見上げる静に、心臓がどくんと音を立てる。
静の半泣きの顔が、可愛いと思ってしまった……。
僕は自分の恋心に、気づいてしまった。
僕の恋愛対象は、女の子だと思っていた。
でも、ときめいてしまった胸は、目の前の男が好きだと宣っていた。
「しず」
声に向けた瞳に映ったのは、隣のクラスの男、篠原 厳兜(しのはら げんと)だった。
がっしりとした体格に短く刈り揃えられた髪。
少しだけ垂れた目許は、懐っこい印象で、例えるのなら大型犬だ。
ずかずかと歩み寄った180センチを越える大男の厳兜は、ちんまりと座る静の頭をガシガシと混ぜる。
「居残りかよ。待っててやるから早く終わらせろよ」
ぽんぽんっと頭を叩いた厳兜は、少し離れた席に、どかりと座る。
厳兜は、静の……恋人だ。
僕と知り合う前から。
高校に入学したときには、2人は既にそういう仲だった。
厳兜の視界に、僕は映らない。
嫉妬するほど気にする存在でもないというコトだろう。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 11