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プロローグ
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僕があの人に、この館で最初に会ったのは、夏だった。
早朝に、薔薇が咲き乱る庭で、僕が日課の水やりをしていた時に。
「幸樹(こうき)さまですか?」
人がいるとは夢にも思やなかった僕は上呂を落としそうになりながらも、慌てて振り返った。
…っ、!
そこには、背の高い、恐ろしく綺麗な男が、キッチリした黒スーツ姿立っていた。
「あ、の…、すみません。
どちら様ですか?」
どもる僕に、
男は微笑みながら、会釈をして、
「失礼しました。私、お父様の会社の専務をしておりました、黒澤(くろさわ) 亮次(りょうじ)と申します。」
そして僕を、深い黒の瞳で見つめた。
まるで僕の姿を焼き付けているかのように、強い眼差しで。
今でもはっきり覚えている。あの一種異様な熱を帯びた、獲物を獲らえたかのような鋭い眼差しを…。
僕は彼の目に見えない圧力に圧倒されながら、なんとか掠れた声を絞り出した。
「はあ…、あの…、会社の方がこんな朝早く、なんの御用でしょう?」
しかも、息子の僕なんかに。
「今、父はおりませんが…、」
「知っております。」
そう言いながら、彼はゆっくり僕に近づいてきた。
薄い笑みを浮かべながら。
「貴方に会いに来たのですよ。」
彼から異様な空気を感じた僕は握りしめていた上呂を落とし、思わず一歩後ずさった。
しかし彼の眼差しに、身体が弛緩して、後退りすらままならなくなる。彼の目をみているとなにか催眠にでもかかったかのように、力がずるずるぬけていくような気がした。
しかし、なんとか足に力を入れ、持ち堪えながら、
まっすぐ黒澤という男をみすえると、彼はやっぱり笑って低い声で僕の耳元に言葉を吹き込んだ。
「いや、正確に言うと…、」
そうして覆いかぶさるように立ちはだかった彼は、
「貴方を捕えにきたのです。」
まるで熱い眼差しで僕を囲いこみ、僕を捕らえたのだ。
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