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プロローグ《1》
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【プロローグ】
街灯の少ない夜道を月明かりが微かに照らしている。
大通りを外れて幾重にも枝分かれする細い路地を抜ければ、その場所は姿を現す。
レンガ造りの洋風な建物は、そこだけが別世界のように周りの景色から浮き出ていた。薄暗い夜の街に凛として鎮座するその大きな建物の中では、外からでは決してわからない婀娜《あだ》やかな営みが行われていた。
「ッ…はぁ、んぅ……! ぁ…、ぅぐッ……」
必要最低限の家具だけが置かれた質素な部屋。その部屋の目的を物語るように、中央には上質なベッドが置かれ、その上に嬌声をあげる青年と一心不乱に腰を振る男がいた。
青年を組み伏せた男は、獣のようにその欲を何度も青年の腰に打ち付ける。そのたびに熱を帯びた艶やかな嬌声が、青年の口から洩れ出ていた。
青年の髪は目を惹く白色をしており、部屋の明かりで輝いて見えた。長いまつ毛が目元に影を落とす様は、見るものに官能的な印象を与える。
全身の色素が人よりも薄い青年は、儚げな雰囲気を纏いながら、男の下で艶やかな声を奏でた。
部屋の中には独特の香りが立ち込める。それが青年の発するフェロモンだと男は気が付かない。ただ夢中になって青年を自分のモノにしようと、その行為にのめり込んでいた。
ここは、Ωとβだけが働く男性専用の売春宿。
『男情館(なんじょうかん)』。
自らの身体を商品として金を稼ぐ彼らは、ここでは“ボーイ”と呼ばれる。
βが八割、Ωが二割を占める、約三十名のボーイたち。
そこで全てのボーイの頂上に立ち、不動の指名率No.1を誇るΩ。
──それが俺だ。
後孔がグチュグチュと卑猥な音を立てる。何度も出し入れを繰り返されたせいで、潤滑剤なのか精液なのかわからない粘液が泡立ちながら、シーツの上にポタポタとシミを作っていく。
「あッ…! はぁ、きもちぃ……ッ、」
背筋を駆ける快感を受け、自分の口から嬌声があがった。
俺の上で汗だくになりながら腰を振る客の首に、わざとらしく腕を絡め、快感に染まり焦点の合っていない男の後頭部を引いて、だらしなく開いたままの唇に口付けた。
「イイよ、ぁ……一緒にッ…」
男のモノがナカでビクビクと脈打つのがわかる。限界が近いのがわかり、男の耳元で囁きながら、グッと男のモノを締め付けた。
「ッ、……!」
途端に息を詰め、男の眉間にシワが寄る。同時にナカに熱いモノが注がれた。その感覚に身震いしながら、合わせるように俺も精を吐き出した。
ズルッと性器が抜けていく感覚に「ンッ…」と声が漏れる。同時にトロンと惚けた顔をした客の男と目が合い、その身体がぐったりと脱力して、俺の上に倒れ込んで来た。
「……重い」
小さく笑いながら男の頭を撫で、乱れた髪を整えてやる。荒い呼吸を落ち着けようと上下する背中に手を添えながら、男の耳元に口付けた。
「もっとシようか……?」
ビクリと男の肩が跳ねる。面白くなって、わざと吐息を絡めながら男の耳たぶを噛んだ。
男が顔を真っ赤にして、飛び起きるように上体を起こす。
「レイくん、いじわるしないでよ……」
耳を押さえながら、俺を見下ろしてくる男と視線を絡める。
「なんで? 好きでしょ」
そのままペロッと唇を舐めてニヤリと笑えば、男はバツが悪そうにグッと口を噤(つぐ)んだ。
「ありがとう。また来てよ」
シャワーを浴びて、身支度を整えた男を玄関ホールまで見送る。外はすっかり日が落ち、時計は二十一時を指していた。
十二月も半ばとなり、少し肌寒い。
羽織っていたカーディガンを身体に巻き付け、男が店を出るのを見送った。
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