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第一章「快楽の香り」《1》
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【第一章:快楽の香り】
「オーナー」
立て続けに指名が続き、身体が重く腰もケツも痛い。
玄関ホールで客を見送ってから、オーナーに呼ばれていたため、ホテルのフロントのような作りをした受付に立ち寄った。
「……レイ」
オーナーは俺の顔を見るなり、呆れたような顔をして首を横に振る。
「わざとだろ」
「……何が?」
心当たりがないわけではなかったが、わざとらしく首を傾げてみせる。
「リトのことだ」
「……ああ」
内心、やっぱりなと思いつつ目をそらした。
「あんなに泣き腫らしてたら、客につけらんないだろ」
「そうだな」
特に悪びれるつもりもないので、テキトーに返す。そんなことより疲れているから休ませてほしい。
「お前なぁ……」
付き合いが長いのもあって、反省していないのが伝わったようだ。早々に諦めたらしいオーナーは深々とため息を吐き出した。
なんでコイツは、いちいちリトに構うんだか……。
さっさと寝たかったが、このあと時間を開けてまた予約が入っている。わざわざ部屋まで戻るのも面倒で、受付のバックヤードにあるソファで横になることにした。
「リトは今日も休みにしたぞ。赤字の分はお前の給料から引くからな!」
「は?」
オーナーのお気に入りのクッションを勝手に枕にしていると、勝ち誇ったような顔と目が合った。
「……はあ」
もういい、好きにしてくれ……。
金にがめついオーナーにこれ以上何を言っても無駄だと判断し、近くにあった毛布をかぶってさっさと寝ることにした。
俺が諦めたことに満足したのか、オーナーは嬉しそうに仕事に戻って行った。
________さん、
「レイさん」
「んー……」
微睡《まどろ》みの中で名前を呼ばれる。目を開けようとしたが、照明が眩しくて開けられず眉間にシワを寄せた。
「レイさん!」
眩しいのと寒いのとで毛布を頭まで被ると、非難する声とともにそれを剥がされる。薄らと目を開け声の主を確認してみれば、困った顔をしたリトがソファの横からこちらを覗き込んでいた。
「指名だそうですよ。オーナーが起こしてこいって……」
寝ぼけた頭でリトの目元に手を伸ばす。ビクッと肩を跳ねらせるのも気にせず、その目尻を親指でなぞった。
「……まだ少し赤いな」
明け方よりだいぶ落ち着いているが、リトの目元はまだ赤く、まぶたも若干腫れているように見える。
「あ、あの……」
顔を真っ赤にしたリトから手を離し、ソファの背もたれを掴んで起き上がった。
「何でここにいるんだ?」
乱れた髪をテキトーにかき上げながら今更になって聞くと、「いや…その…」とリトは罰が悪そうな顔をした。
そこに、開いたままだった扉からオーナーが入ってきた。
「レイ、早く用意しろ。そんでこのあとの指名、リトと一緒に行ってこい」
は?
思わず動きが止まる。
「何言ってるんだこのバカは」
「おい、声に出てるぞ」
オーナーは呆れたように眉をひそめた後、イタズラが成功した子どものようにニヤッと笑い、客のファイルを俺に向かって投げた。
それを受け取り、ファイルを開いて客のデータを確認する。
「お前、リトと相性良いみたいだし、今日から教育係ってことで」
あ゛?
「あ゛?」
「おい、せめて心の中だけにしろよ」
オーナーがわざとらしく肩を竦めてみせるが、それどころではない。
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