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第一章「快楽の香り」《2》
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「なんで俺が教育係なんかやらなきゃならないんだ」
俺一応、ここのNo.1ボーイなんだが?
「未成年のオメガの世話を任せられるやつなんていないだろ。もし何か“間違い”があっても困るし。ましてや、ベータのやつにやらせるわけにもいかないだろうが」
「俺が“間違い”を起こさないとでも?」
余りにも自信満々に言うオーナーにムキになって返すが、オーナーはそれを鼻で笑った。
「いや、お前オメガ抱くの嫌いだろ」
図星を突かれ、ムッと口をつぐむ。
そうなんですか……? とでも言いたげなリトの視線を無視して、「はあ」とため息を吐きながら渋々ソファから立ち上がった。
「……行くぞ」
客のファイルをオーナーに突き返し、さっさとバックヤードを後にする。
「わかってると思うけど、リトは本番禁止な〜!」
オーナーがわざとらしく口元に手を当てて言うのを静かに睨みつけ、リトを連れてエレベーターに乗り込んだ。
ボーイ用の化粧室に立ち寄り、髪をセットし直す。化粧をしてもすぐに落ちてしまうがある程度はしていく。
それを横で見ながら、ソワソワと落ち着かない様子のリト。
……うざいな。
キョロキョロと辺りを見回しながら、忙しなく手を動かすリトに静かに眉を寄せる。
「リト」
「は、はい!」
リトは裏返りそうな声で返事をしながら、ビシッと姿勢を正した。
「緊張するのはわかるが、一先ずお前は何もしなくていい」
「は、はい」
情けなく眉尻を下げ、手を握りしめる様子を見つめる。最初に会ったときの生意気な印象は身を潜め、さながら犬のような従順さだった。
「今回の客は別に悪い人じゃない。危ないプレイも特にしないし、比較的まともな客だ。まずは俺と客のセックスを見て、雰囲気に慣れるところから始めろ」
「は、はい……」
怖がらせないようにできるだけ声音をやわらげるが、意味があるのかないのか、リトは表情を強張らせる。
「昨日の今日で怖いかもしれないが、お前にいきなり客の相手をさせるつもりはないから。客の気がそれないように、精々部屋の隅で大人しくしてろ」
「わ、わかりました……」
まだ完全には落ち着かないようだったが、リトは深呼吸を繰り返すと少しだけ表情を緩めた。その様子を横目に見ながら、面倒なことになったと内心舌打ちをする。
時刻は零時をまわっていた。
「矢野さん、お待たせしました。」
ノックしてから部屋に入ると、先にシャワーを浴びたらしいバスローブ姿の男は、サイドテーブルでコーヒーを飲んでいた。
「やあ、レイ遅かったね」
矢野さんは大して怒る様子もなく、俺の後ろで縮こまるリトに視線を移す。
「その子は?」
リトが小さく体を震わせたのがわかった。
「リトと言います。俺が教育係をすることになりまして、申し訳ないんですが、見学させといてもいいですか?」
矢野さんは持っていたカップをテーブルに置くと、穏やかに笑って「恥ずかしいね」と言いつつ、承諾してくれた。
ベッドに腰かけ、矢野さんとキスを交わす。中に入ってくる舌を受け入れ、ぐちゅっと音を立てながら口付けを深めていく。
気づかれないように横目でリトを見ると、部屋の隅のイスに座り、食い入るようにこちらを見ていた。
熱のこもった視線がわずかに鬱陶しい。
何度も舌を絡め、溜まっていくどちらのかわからない唾液をゴクッと飲み込む。飲み込み損ねた唾液が口端からこぼれ、首筋を伝ってシーツに落ちていった。
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