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第二章「発情の香り」《1》
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【第二章:発情の香り】
ピンポーン。
どこかで聞いた事のある音が聞こえ、薄らと目を開ける。すぐ隣ではリトが相変わらず寝ていて、あのまま眠ってしまったことを思い出した。
ピンポーンピンポーン。
眠たさの残る体をノロノロと起こし、ゆっくりと玄関へ近づき扉を開ける。
「お、本当にいた」
視線を僅かに下げると、そこには見慣れた顔があった。
「イツキ……?」
「悪いね、寝てた? オーナーがここじゃないかって言うからさ」
イツキは大して悪いと思ってなさそうな口調でそう言うと、ズカズカと勝手に部屋の中に入ってくる。とは言え、ここは俺の部屋でもないので、何も言えない。
「だれ……?」
扉の音で目が覚めたらしいリトが、ベッドの上で体を起こしていた。その目はまだ眠たそうだ。
「初めまして新人くん。俺、イツキ。 ここのボーイだよ、よろしくね〜! ちなみにベータだよ」
ベラベラと自分のことを話すイツキに、リトは困惑しながらも「リ、リトです……」と返した。
「ん? リトくん発情期になっちゃったの? 大変だね〜」
イツキは手に持っていた袋から、ガサガサと飲み物や市販の弁当を取り出し始め、それを勝手にテーブルに並べていく。βのくせに特にリトのフェロモンにあてられている様子もなく、ケロッとしていた。
「なんか昨日も色々あったみたいだね?」
イツキは俺とリトを交互に見ながら、わざとらしく首を傾げてみせる。リトは何かを思い出したのか、顔を赤くして僅かに目を泳がせた。
「レイが教育係なんて可哀想。ご愁傷さま」
「……おい」
あからさまに肩を竦めるイツキにジトッとした目を向ける。イツキはそんな俺を特に気にした様子もなく、ドカッとイスに腰を下ろした。
「どうせ何にも食べてないだろうと思って、コンビニで買ってきた。ちゃんとリトくんのもあるよ〜」
マイペースに食事の準備を始めるイツキに促され、俺もリトもそれぞれまだ少し温かい弁当を手に取った。
「あ、ありがとうございます……」
リトは、まだイツキを警戒しているようだったが、お腹が空いていたのか素直に弁当に手を伸ばす。どうやら抑制剤のおかげで、ヒートは落ち着いているようだ。
「食べな食べな〜」
イツキはさっそくリトを気に入ったらしく、椅子の上であぐらをかいてニコニコと笑みを浮かべた。小柄な見た目に似合わないほど口にご飯を頬張りながら、楽しそうにリトを見ている。
チラッと壁の時計を見ると、お昼の十一時を示していた。
随分寝ていたなと自分に驚きつつ、イツキと同じように食事を口に運ぶ。
「んで、二人はどこまで行ったの? ヤった?」
「ッえ!? …ゲホッゲホッ」
イツキの言葉にリトが盛大にむせ込む。あからさまに動揺しているリトを見ながら、特に気にせず食事を続けた。
「……ははーん、なるほど?」
そんな俺たちを見て、何を思ったのかイツキはニヤニヤと笑みを浮かべる。
「何がなるほどだ」
眉間にシワを寄せて、一人で楽しそうにしているその顔を睨んだ。
「いやぁ……レイが相手だと色々大変だろうなって?」
イツキは特に怯む様子もなく、意味ありげにリトを見て、ニヤッと口角を上げた。それを見たリトの顔がバーッと赤く染まっていく。
意味がわからないと思い、リトの方に視線を向ける。すると、バチッと目が合ってすぐに顔をそらされた。
「……?」
頭に疑問符を浮かべていると、「感覚が常人とは違うのよレイは」となぜかイツキに笑われ、釈然としなかったが、面倒だったのでそれ以上何も聞かなかった。
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