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第二章「発情の香り」《7》
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ぐったりと四肢を投げ出す身体を無理やりベッドに転がす。携帯を取り出し、時間的に起きているかわからない相手に着替えを持ってくるように連絡し、着ていたシャツのボタンを外した。
ベトベトになったズボンと一緒にさっさとそれらを脱ぎ捨てると、そのまま部屋に備え付けられているシャワー室へと向かった。
簡単に体を洗い、備品として常備されているバスローブに腕を通す。
髪をタオルで拭きながら部屋に戻ると、未だにベッドに転がったまま動いていない体を足で軽く転がした。
「おい、お前も体洗ってこい。匂いすごいぞ」
別に体臭が臭うという意味ではなく、あくまでフェロモンが、という意味だ。
それが伝わったのか伝わってないのかはわからないが、リトは億劫そうに体を起こすと子鹿のように足をガクガクとさせながら、壁を伝って浴室へと消えていった。
「大丈夫か、あれ……」
誰もいなくなった部屋で一人呟くと、ちょうどインターホンが軽快な音を立てる。
扉を開ければ予想通りの男が、俺の仕事用のカバンを持って立っていた。
「どうも。オーナー」
オーナーは、「俺をパシリにするなよ」と不満げに言うと、部屋の惨状を玄関から覗き見て「うわ…」と引いた声をあげた。
「すごい匂いだな……。お前、あんま苛めてやんなよ?」
オーナーはそう言うと、「今日の予約、十八時からだからな」と俺に嫌なことを思い出させてからヒラヒラと手を振って去っていった。
オーナーから受け取ったカバンの中から着替えを取り出す。仕事柄いくつかこうして着替えやら薬やらをセットしたカバンを事務所や部屋に常備している。これはその内の一つだ。
さっさと自分の洋服に着替えてから、汚れたイスを片付け、ついでに昨日剥がしたままだったシーツを新しく敷き直した。
しばらくして、シャワー室からラフなスウェット姿でリトが出てきた。その顔色はあまり良いとは言えない。
「ほら」
びしょびしょの髪のまま、ぐったりとイスに座り込むリトからタオルを奪う。そのタオルで頭を拭いてやり、ドライヤーでテキトーに茶色がかった金髪を乾かした。
ヒート中というのもあって、気怠そうにされるがままになっているリトへ、用意しておいた薬とペットボトルを差し出す。
「ほら、薬。ちゃんと飲め」
「ありがとう……ございます」
リトは素直にそれを受け取り、口に含む。薬を水で流し込む様子を見つめながら、ベッドに腰かけ口を開いた。
「敬語じゃなくていい」
「え……」
シャワーを浴びてから、俺と目を合わせようとしなかったリトとバチッと目が合う。
「レイさんって……何歳なんですか?」
目が合ったままそんなことを言われ、一瞬キョトンとしてしまう。
「……二十四」
「え、もっと歳近いと思ってた!」
「あ゛?」
「嘘です、ごめんなさい」
眉間にシワを寄せると焦ったように謝りだす。そんなリトに数秒の間を開けて、ふはッ…と笑いが込み上げた。
「お前ほんと、犬みたいだな」
「え、そう……ですか?」
笑った俺を見て驚いた顔をするリトに、口元を緩めたまま「うん」と返す。しかし、納得いかないのか、リトはそのまま「うーん…」と首を捻った。
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