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第三章「痛みの香り」《8》
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「それって大丈夫なんですか……?」
αと二人っきりで、レイさんは安全なのかな。
顔を強ばらせて言うと、口をモグモグと動かしながらイツキさんが俺を見る。ゆっくりと唐揚げを飲み込むと、静かに眉間にシワを寄せ顔をしかめた。
「……大丈夫じゃないよ」
イツキさんが浮かべていた笑みを引っ込め、真剣な顔をする。
「……その客、レイを初めてレイプした野郎だから」
頭を強く殴られたような気がした。
「どういう……ことですか」
思わずイスから立ち上がって、ポツリと呟く。
「どういうも何も、そのままの意味。リトくんがレイからどこまで聞いてるのか知らないけど、レイのヴァージンを奪ったのがソイツなんだよ」
立ったままの俺を「まぁ、座んなよ」と優しくたしなめながら、イツキさんは冷静に説明してくれる。
「その客は白川って言って、名前くらい聞いた事ない? 大手企業の社長をやってる。元々はレイの母親の客だったって。まぁ、オーナーもレイもその話はしたがらないから、詳しくは知らないけど」
イツキさんはペットボトルのお茶を一口飲むと、小さくため息を吐いた。
「白川は半年に一回、今日みたいに予約を入れる。その度にレイは、」
そのあとに続けようとした言葉をイツキさんが言い淀む。
「レイは………」
目を伏せて何かを考えるように黙り込むイツキさんを静かに見つめた。
「……まぁ、今回が初めてってわけじゃないから。そんなに心配しなくてもレイは上手くやるよ」
わざとらしく笑うイツキさんが、何かを隠したのがわかった。でも、「冷める前に食べよ!」とご飯を頬張るイツキさんに、それ以上踏み込んだことを聞くのは躊躇われた。
胸の中が不安で埋め尽くされていたけど、教えてもらったところで俺には何の力もない。
レイさん、泣いてないといいな……。
レイさんの泣いたところなんて見たこともなければ、想像もできないけど、ふとそう思った。
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