アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
第五章「揺れる香り」《1》
-
【第五章:揺れる香り】
─リトside─
穏やかな寝息を立てるレイさんの寝顔を静かに見つめる。
気が抜けたのか、レイさんはあのあとすぐに寝てしまった。当たり前だ。きっとほとんど寝ていなかったと思う。
時計の針は、もうすぐ十五時を指そうとしていた。
あれから特にオーナーからの連絡はないけれど、イツキさんから俺とレイさんを心配するメールが来ていた。簡単に状況を説明すると、「何か要る物があったら遠慮なく言ってね」とイツキさんらしい返事が返ってきた。
それにお礼を言って、今に至る。
……レイさんが好きだ。すごく。
レイさんも同じ気持ちだとわかって、さっきまで胸の中を埋めつくしていた黒い感情は、すっかり姿を消してしまった。
もちろん、レイさんをこんな目に遭わせた男のことは憎くて堪らない。でも、二度とレイさんが傷つかなくて良いように、俺に出来ることは何だってするって決めた。
これからは、俺がずっと隣でレイさんの笑顔を守りたい。
自分の頬がだらしなく緩んでいるのをそのままに、そっとズレた布団をレイさんにかけ直す。ベッドを揺らさないようにそーっと離れて、リビングへ向かった。
レイさんが起きた時のために、何か食べるものを作っておこう。
広々としたキッチンは、綺麗に整理整頓されていた。勝手に開けるのもどうかと思ったけど、心の中でレイさんに謝って冷蔵庫や棚の中を物色する。
お米やら、卵やら、食材も調理道具も何でも揃っていた。
もしかしたら、レイさんは意外と料理をするタイプなのかもしれない。
そんなことを思いながら、テキトーに料理を始める。こう見えて、食費を浮かせるために自炊をしていたから、簡単なものなら作れる。
ふとさっきのレイさんの笑顔を思い出して、口元が歪んでしまう。
俺、今すごく幸せな気持ちでいっぱいだ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
47 / 119