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第五章「揺れる香り」《8》
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「邪魔しないでよ。レイには関係ないんでしょ?」
カオルさんが笑って言うのを視界の端に捉えながらも、真上にあるレイさんの顔から目が離せない。
なんでそんなに辛そうな顔してるの?
俺、また何か悪いことしちゃった?
レイさんの怒る理由がわからなくて、どうしていいかわからない。
「俺はリトの教育係だ。悪影響を及ぼすやつから引き離して何が悪い」
レイさんはそう言うと、ようやく俺を解放してくれた。すぐに身体を起こしたけど、相変わらずカオルさんとレイさんの間で板挟み状態だった。
「誰が悪影響だ。むしろレイの方が教育に悪いで、しょッ!」
カオルさんが言いながら、近くにあったブランケットをレイさんに向かって投げつける。
「自分の格好がどんなか考えてからもの言いなよ」
カオルさんの言葉に、レイさんがハッとしたような顔をして俺の顔を見る。
あれ、これもしかして俺がレイさんをそういう目で見てたの……バレた?
一人背中に冷や汗をかいていると、レイさんは気まずそうな顔をしながら、投げられたブランケットを肩に羽織った。
「じゃあ、リト。今から俺の部屋に行って、もっと楽しいことしようか」
「え……?」
ニコニコと笑うカオルさんに顔を近づけられ、思わず顔が赤くなる。
「リトはここのボーイだぞ。ボーイとの本番行為は客以外禁止されてる」
「えー? ちゃんとお金払えばいいんでしょ?」
「リトは未成年だ」
「俺は本番までするなんて言ってませ〜ん」
俺を挟んで子どもみたいに言い合う二人に、思わず口を開いていた。
「あ、あの!」
二人の視線が俺に向けられる。
「俺、わかんないことばっかなんです……けど……」
両隣からの視線が痛くて語尾が弱くなってしまった。
「ほら、困ってるよ」
カオルさんは、レイさんに向かって責めるようにそう言うと、ふっと笑って俺の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。
「レイは、リトに嫌われたくないから、昔のことを知られたくないんだよ」
「え……?」
カオルさんの言葉に頭を撫でられながら、戸惑いの声をあげる。
「レイはリトのことが凄く好きってこと!」
「ッおい!」
カオルさんの言葉を理解できずにいると、焦ったような声を出してレイさんが気まずい顔をした。
「だってそうでしょ? リトのことが嫌いなら、昔のことさっさと話して、軽蔑でもドン引きでもされて嫌われればいいんだから」
カオルさんの言葉にレイさんはグッと口をつぐむ。
え、レイさんが……俺のことを好き……?
信じられない気持ちでレイさんの方を見ると、あからさまに目を逸らされた。
「レイが話さないなら、俺が話すだけだよ」
カオルさんが脅すように、けれど優しい口調でそう言うと、レイさんは諦めたように身体を後ろに捻って、ソファの背もたれに頬杖をついた。
「レイさん……?」
レイさんが何を考えてるのかわからなくて、その横顔をじっと見つめる。
レイさんはそんな俺を一瞬だけ横目で見ると、また直ぐに視線を逸らしてため息を吐いた。
「はぁ……気分が悪くなったら言え、やめるから」
「え……」
そう前置きをしてから、不貞腐れた顔をしたままレイさんは目を伏せて静かに話し始めた。
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