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第六章「過去の香り」《3》
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震える肩を優しく叩かれ、身体を強ばらせたレイはゆっくりと顔を上げる。
見たこともないくらい背の高い、透けるように綺麗な金髪をした男だった。レイは恐怖に目を見開き、縮こまっていた身体を更に小さくさせた。
男は穏やかな笑みを浮かべると、怯えるレイを安心させるように床に膝を着いて目線を合わせる。
「やあ」
耳障りの良い低い声で微笑んだ男は、レイの頭を大きな手でそっと撫でた。
「君がレイくん?」
「ッ……」
突然見ず知らずの男に名前を呼ばれ、レイはビクッと肩を震わせる。しかし、少しの間を置いて小さくうなずいた。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよ。ほら、おいで」
肌触りの良い黒いスーツを着た男は、レイの両脇に手を入れ、軽々とその体を持ち上げた。
「わっ……」
レイは慌てて男の肩に掴まったが、男は片手でレイを抱き上げ、スタスタと歩き出した。
「ほら」
近くのテーブルへ辿り着くと、男はレイに向かってグラスを差し出す。
「美味しいよ。飲んでごらん」
男に優しく微笑まれ、レイはビクビクしながらもそのグラスを素直に受け取った。男が笑顔で飲むよう促したため、レイはそっとピンク色の液体が入ったグラスに口をつける。
「……あまい」
口の中に広がる飲んだことのない美味しい味に、幼いレイは僅かに緊張を緩めた。
「食べ物は? 何が好き?」
男はまた優しく笑うと、今度はレイをたくさんの料理が並んだテーブルへと連れていった。テーブルの近くに降ろされ、レイは見たこともない色鮮やかな食事に目を輝かせた。
男は甲斐甲斐しく「これは? こっちはどう?」と色々な料理を皿に盛り付け、レイがそれを食べるのを優しく見守った。
「ぉ、おいしい……です」
次第に男への警戒が緩んだレイは小さな声でそう言った。相変わらず周りの客たちが、ねっとりと絡みつくような視線を送ってきていて居心地は悪い。しかし、レイは自分よりも遥かに大きなその男に、慣れないながらに笑顔を見せた。
「本当だ。少し声変わりし始めてる」
それまでずっと微笑みをなくさなかった男が、不意にその笑みを消してレイを見下ろす。
「ぇ……?」
レイは言われた言葉の意味がよくわからず、男の顔を見上げた。
「ジュリが急にガキのお披露目をしたいなんて言うから、何事かと思ったが。こんな可愛い顔だったら、そりゃ声変わりする前の方が高値がつくよな」
男にニコリと微笑まれるが、その目はまるで獣のようで、レイは何を言われているのかわからない。
ふと気づけば、さっきまで遠巻きにレイを見ていた客たちが、その距離を詰めてきていた。
ジリッと背中を嫌な汗が伝う。本能的に危険を察知したレイの身体は、床を蹴って逃げ出そうと走り出す。しかし、呆気なく笑みを浮かべる男に捕まってしまった。
「イヤッ……!」
固いタイルの床に強引に押し倒され、レイは手足を必死にバタバタと動かすが、男の手はビクともしない。男はレイの両手をレイの頭の上に押さえつけると、悲鳴をあげる幼い唇に無理やり口付けた。
レイはパニックになりながら、至近距離で自分を見る青色の瞳と目を合わせる。
明らかに日本人ではない、ブロンドヘアの男は自分のネクタイを外すと、レイの細い腕を容赦なく縛りあげた。
「やだっ、はなしてッ……」
男に上に乗られ、レイはまともに身動きすら取れない。
それでもパニックを起こしたまま、必死になって逃げようと暴れる。そのたびに、腹の上に乗せられた男の膝がミシミシと皮膚へ沈んだ。
「い゛ッ…!!」
押しつぶされた内臓が容赦なく肺を圧迫する。痛みと息苦しさに浅い呼吸を繰り返しながら、レイは自分を見下ろす男が楽しそうに笑みを浮かべているのを見た。
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