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第六章「過去の香り」《10》
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部屋に戻ったレイをジュリはベッドに押し倒した。
汚れた服を脱がされるが、未だ放心状態のレイは抵抗せずにそれを受け入れる。ベッドの上に仰向けに寝転んだまま、気づけば服を全て脱がされていた。
「ッ……」
両手に手錠をかけられ、ベッドの頭へと固定される。レイは逆らうこともできずに、無表情のジュリの顔を見上げた。
怒ってる……? 殴られる……?
これから与えられるであろう痛みを想像して、レイの身体が小刻みに震えだした。
しかし、予想に反して、ジュリはおもむろに自身の服を脱ぎ始めた。
「ぇ……?」
小さく困惑した声を発したレイを気にする素振りもなく、ジュリはきめ細やかな肌を躊躇いなく露わにしていく。
バサッ──。
ジュリが洋服を床に投げ捨てる音が、やけに大きく部屋に響いた。
恥ずかしげもなく裸になったジュリと、ベッドに裸で縛りつけられたレイ。
レイは自分の身体に伝わるジュリの肌の温もりに血の気が引くのを感じた。
実の親子であり、よく似た髪色と顔立ちの二人。
白色の透き通るような髪が二人の間で揺れた。
「ッ……!」
気づけばレイはジュリと唇を合わせていた。
子どもを慈しむキスなどではない、官能的な口付けだった。逃げようするレイの口の中に強引にカプセルのような固形物が押し込まれる。
抗うこともできないまま、レイはその薬を飲み込んだ。
「レイ……レイ……」
まるで自分のアクセサリーでも愛でているかのように、ジュリの唇が幼い身体に降り注ぐ。うわ言のようにジュリが名前を口にするたび、レイの心臓がバクバクと早くなっていく。
これまで自分をぞんざいに扱ってきた母親が、その態度を一変させたことにレイは戸惑いを隠せなかった。
「レイ、貴方は私の血をひいてるの。他のオメガに負けるなんてあり得ない」
歪んだ笑顔がレイに向けられる。
異様な緊張感が幼い身体を震わせ、それに合わせて手錠がカタカタと小さく音を立てた。
「じゅ、じゅり……」
レイの震える唇が、掠れた声で許しを乞うように母親の名前を呼んだ。しかし、レイを見下ろすその顔は、不気味な笑みを深めるだけだった。
「No.1でさえ居れば、アルファだろうと従えられる。でも、私も老いには勝てないの」
細い華奢な指がレイの頬を縁取り、震える唇の感触を楽しむように撫でる。
「でも、貴方がNo.1になれば、私の生活は安泰よ」
真っ黒に淀んだ瞳が、レイを真っ直ぐに見下ろす。
「……だからレイ、私の身代わりになってね」
そう言って微笑んだジュリの目は、笑ってなどいなかった。
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