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第七章「嫉妬の香り」《1》
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【第七章:嫉妬の香り】
「これはどういう状況なんだ……?」
次の日。
時計はちょうど昼の十二時を回ったところだった。
昨日ぶりにやってきたオーナーが顔を引きつらせながら、こちらを見ている。その視線を気にした様子もなく、レイさんはソファに座って脱力したように俺の肩にもたれかかっていた。
俺が口元に運んだスプーンをパクッと口に含み、もぐもぐしている。
そんな状況に明らかに困惑しているオーナーに苦笑を返しながら、「おはようございま〜す……」と小声で挨拶をした。
オーナーが困惑するのもよくわかる。自分でやっといてなんだけど、変な光景だと思う。
「……お前のそんな姿、初めて見たぞ……なんか気持ち悪いな」
オーナーは引いたような声でそう言うと、自分のポケットをあさり、取り出したタバコを咥え火をつける。
「おい、ここで吸うなって何度も言ってるだろ」
言いながら、レイさんが身体を起こして座り直す。そのまま俺の手からスプーンを取り、渋々といった様子で自分でご飯を食べだした。
「しょーがねぇだろ。うちだとカオルが吸わせてくんねーんだから」
灰色の煙がリビングに広がって消えていく。オーナーは我が物顔でキッチンの換気扇の下へ移動し、慣れた様子でタバコを吸い始めた。
そんな二人のやり取りをソファに座ったままキョロキョロと目で追い、最終的にレイさんの顔で視線をとめる。レイさんは黙々と食事を続け、お皿が空になると、それをテーブルに置いてだるそうに息を吐いた。
「平気?」
昨日の今日で、やっぱり身体のあちこちが痛むらしい。何をするのにもしんどそうなレイさんに頼まれ、昨日と同じたまご粥を作った。
でも、いざ食べようと言うときになって、スプーンを持つレイさんの手が震えているのに気がついた。半分冗談のつもりで「手伝う?」と言ったら、本当にスプーンを渡されてしまった。
「あ。」と甘えたように口を開けたレイさんに、自分でもわかるくらい顔が熱くなって。そのまま、本当に食べるのを手伝っていたところに、オーナーがやって来たというわけだった。
オーナーが来たからか、さっきまでの甘えた態度は嘘みたいになくなっている。パッと見ただけでは、体調が悪いのもわからないだろう。それでも、ぐったりとソファにもたれかかるレイさんに心配が募る。
さっさと自分の分のおかゆを口にかき込んで、空いたお皿をシンクに運んだ。
「あ、そうだ。リト、お前の荷物こっちに運んでいいか?」
洗い終わったお皿を拭いていると、おもむろにオーナーが言った。
「え、あー、そう……ですね?」
そう言えば、大した量はないけど、自分の荷物を部屋に置いたままだ。ソファに座るレイさんの背中に視線をやりながら、言葉を探す。
俺、ここにいていいのかな……?
どうしたらいいかわからなくて困っていると、レイさんはこちらに背を向けたまま、俺の考えを読んだみたいに「ここに住んでいい」と言った。
「じゃあ、あとで持ってこさせる」
そう言って煙を吐き出すオーナーに、申し訳ないから自分で運ぶと言ってみたけど、「ヒート中は大人しくしてろ」と正論を返されてしまい、仕方なくお願いすることにした。
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