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第七章「嫉妬の香り」《2》
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オーナーは レイさんに「暇だろ」と分厚い封筒を渡すと、「会計作業よろしく」と笑いながら帰っていった。
ニ人っきりに戻ったリビングに、沈黙が流れる。
レイさんはため息を吐いてテーブルに書類を取り出すと、カタカタと慣れた手つきで電卓を叩き始めた。物凄い量の数字や記号が並んでいて、見てるだけで眠くなってしまう。
邪魔しないように一人分開けてソファに座ると、顔を上げたレイさんがなぜかムッとした顔で俺を見る。
え、なに……。
内心戸惑っていると、ぽんぽんとソファを叩かれた。首を傾げながらも、レイさんのすぐ隣に移動してみる。すると、レイさんは満足したような顔でまた電卓を打ち始めた。
えぇ……なにそれ……。
ドキドキと心臓がうるさくて、レイさんに聞こえていないか心配になるくらいだった。
チラッと横顔を盗み見ると、相変わらず眩しいくらい綺麗な顔が目に入って、余計にドキドキしてしまう。
身体……熱い。
「薬」
不意に、レイさんが作業の手を止めて俺を見る。
「昼の分、飲んでないだろ。匂いが甘い」
レイさんと目が合って、心臓がギュッと痛くなった。
うわ……恥ずかしい……。
「あ、う、うん……」
いそいそと立ち上がって棚から薬を取り出す。
ヒート中だからかな、なんか落ち着かない……。
薬を飲めばこのドキドキも治まると信じて、コップに入れた水を薬と一緒に一気に飲み干した。
──そうして、夜になった。
全然治まってないッ……!!
ゴロゴロと一日中部屋で過ごし、持ってきてもらった荷物の整理をして、夜ご飯を食べてお風呂にも入って、さあ、もう寝るぞってなったのに、未だにずっと落ち着かない。
ソワソワして、心臓がモヤモヤして、お腹の中が切ない感じ。
言葉にするのが難しいけど、ムズムズ感もある。
まだやることがあると言って、リビングに残ったままのレイさんをベッドで待つ。忙しそうにしているレイさんに俺ができることは、この布団を温めておくくらいだ。
「う゛〜寒い……」
とはいえ、十二月半ばの寒さがつらい。レイさんの分のスペースを隣に開けて、大きなベッドの上で小さく丸まった。
しばらくするとガチャッと音がして、寝室の扉が開く。我ながらわかりやすく、身体がビクッと跳ねた。
あ、俺……。
レイさんが部屋に入ってきたのがわかった瞬間、なぜか急に悟った。
──レイさんに発情してる。
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