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第七章「嫉妬の香り」《4》
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「心臓うるさ……」
ボソッとレイさんが呟いたのが聞こえて、余計に鼓動が早まっていく。
恥ずかしくて唇を噛んでいると、レイさんは俺のうなじに顔をうずめ、大きく息を吸い込んだ。
「お前、ほんと……いい匂いするよな……」
「ッ……」
眠たいのか、少し舌っ足らずな甘い声だった。
やめて、羞恥ぷれいやめて……!
お腹の上のレイさんの手に触れたまま、空いている方の手で自分の口を押さえる。
……恥ずかしくて変な声出そう。
ソワソワもモヤモヤもムズムズも治まったけど、今度は俺の下半身が起き上がりそうでヤバい。
一人で必死に意識を逸らしていると、満足したのか匂いを嗅がれる羞恥ぷれいは終わった。
しばらくして、スースーと後ろから寝息が聞こえ始める。
え、嘘。この体勢で寝たの……?
心の中で「うわ、この人まじか」と思いつつ、何だか俺もすっかり落ち着いてしまって、やがて寝落ちてしまった。
────
次の日。
「レイさん」
「ん?」
レイさんが俺用に部屋を一室空けてくれるというので、朝からその手伝いをしていた。物置になっていた部屋を空けるために、お客さんからのプレゼントだという大量の荷物を片付けているレイさんに声をかける。
紙袋や綺麗な包装紙の中から、高級そうな品物がポンポンと出てくるのを見つつ、レイさんに聞きたいことがあって話しかけた。
床に座って黙々と箱の中身を分けているレイさんの隣に座る。
「あのさ……」
レイさんはこちらを見ずに、手元の作業に集中したままだ。
「俺、借金の催促こなくなったんだけど……」
毎日欠かさず、電話もメールもたくさん来ていたのに。今日の朝、携帯を見ても何も通知がなかったのだ。
昨日、『俺が全部返してやる』なんて物騒なことを言っていただけに、レイさんが何かしたのではないかと、つい疑ってしまう。
レイさんの表情の変化を見逃すものかと、じーっとレイさんの顔を見つめる。
たまたま来てないだけかもしれないけど。というかそうだと良いな……。
「返した」
そう期待していただけに、特に表情も変えずにしれっとそんなことを言われ、目の前が白くなった。開いた口が塞がらないってよく言うけど、まさしく俺がそんな感じになった。
なおも淡々と作業を続けるレイさんの手から、箱を奪い取る。
「か、返した!?」
「うるさい」
箱を抱き抱えながら、思わず大きな声で聞き返した。
でも、すぐに箱を取り返され、レイさんはまた作業に戻ってしまう。
「な、何してくれてんの!?」
約一億円の借金だった。そんな大金を俺なんかに使ったってこと?
レイさんの金銭感覚ヤバくね……?
怒りを通り越して呆然とした顔でレイさんを見ていると、俺の視線に面倒くさそうな顔をして、ようやくレイさんは作業の手を止めた。
「別にいいだろ。俺の金なんだから」
「いや、俺の借金なんだけど……」
眉間にシワを寄せながら言われても、そもそも俺の借金だし、レイさんが返す意味が全くわからない。
「……お前のじゃなくて、父親のだろ」
レイさんはなぜか呆れたように溜め息を吐いて、俺の顔を見た。
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