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第七章「嫉妬の香り」《8》
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「大丈夫……?」
フラフラしているレイさんをお風呂場のイスに座らせ、無意識に身体を確かめる。
怪我は……してないか。
特に傷はないことにホッとしながら、ちらほらとつけられている赤い情事の痕に、気づけばムッとしていた。
「見すぎ」
バチッと目が合った。疲れた顔で、口元だけを緩ませたレイさんの表情にドキッと心臓が脈打つ。
「う、ぁ……ごめッ」
急に冷静になって慌てて視線をそらす。つい、ジロジロ見てしまった。
段差につまずいて転びそうになりながら、急いで浴室を出る。後ろからレイさんの笑う声が聞こえて、余計に恥ずかしくなった。
扉を閉めて少しすると、シャワーの音が聞こえだす。ドキドキとうるさい心臓を何とか落ち着けながら、部屋の清掃を始めた。
「あとは、お風呂場を掃除して終わり……かな」
初めて一人でやる清掃に戸惑いつつ、先輩に教わったことを思い出しながら、片付け終わった部屋の中を見回した。
すると、ちょうど浴室のドアが開いて、バスローブ姿のレイさんが出てきた。フラフラとしながら、近くにあった一人がけのソファにぼふっと座り込む。
「風邪ひいちゃうよ」
ぐったりと動かなくなったレイさんからタオルを奪い、髪をわしゃわしゃと拭く。されるがまま動く気のないレイさんの髪をドライヤーで乾かしながら、サラサラと流れる白髪を指で梳かした。
髪が乾いた頃には、レイさんは今にも寝てしまいそうだった。
「部屋戻って寝なよ」
ドライヤーを片付けながら、目を閉じてしまったレイさんに声をかけてみたけど、動く気配はない。
「レイさん?」
部屋に連れて行ってあげたいのはやまやまだけど、まだ掃除が終わってない。
「んー……待ってるから、はやく」
ソファに座ったまま、舌っ足らずな声でレイさんが言う。半分寝ている感じだ。
「えー……」
先に帰って寝てればいいのに……。
そう言おうとしたけど、レイさんは目を開ける気配がなくて、諦めて浴室を片付けることにした。
「ふぅ……」
慣れない作業に意外と時間がかかってしまった。急いで濡れた手を拭きながら浴室を出ると、案の定、レイさんはスースーと寝息を立てていた。ソファの肘置きに頬杖をつき、固く目を閉じてしまっている。
でも、ちゃんと服は着替えたらしい。使ったバスローブも洗濯カゴに入れてくれていた。
「レイさん」
声をかけても、全然起きる気配はない。
「レイさーん」
両肩を掴んでガクガクと前後に揺らしてみる。目を閉じたままのレイさんの顔は、やっぱりとても綺麗で、少しドキドキした。
身長はほとんど同じくらいなのに、程よく筋肉のついた体はしなやかで、色気があって俺とは全然違う。
ドキドキを誤魔化すように何度も名前を呼ぶと、レイさんは億劫そうに目を開けた。
「終わったよ、帰ろ」
言いながら立たせようと腕を引く。しかし、当の本人が全く立つ気がない。ソファにぐったりと沈んだまま動きそうもなかった。
「は〜や〜く〜風邪ひくって」
ぼーっとしていて、今にもまた寝てしまいそうだ。掴んでいた腕をブラブラと揺らしていると、不意に顔を上げたレイさんと目が合った。
「……キスして」
「え゛……なんで」
眠そうな目が見上げてきて、艶っぽい掠れた声でレイさんが言う。
キスとか……恥ずかしくて無理。
顔が熱くなるのを感じ、眉間にシワを寄せる。
「……キスしてくれたら起きる」
眠そうにしながらも、一歩も引く気がないのが伝わってきた。子どものように駄々をこねるレイさんは、本当にキスをされるまで動く気はないらしい。
「ぅ……」
心臓もうるさいし、顔もひどく熱い。
諦めてレイさんとの距離を詰める。レイさんの足の間に膝をつき、上に乗りかかるように顔を近づけた。
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