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「過去の記憶、か。」
口元に持ってきた箸を止めて、俺の質問を繰り返す。
「そう。さっき牛丼食うの久しぶりって言ったから。
何か覚えてる事があるのかなって。」
そう尋ねると「うーん。」と首を傾げる。
「過去の記憶、っていうか、俺、昨日まで普通に、学校、行ってたんですけど。」
「え?」
予想外の答えに素っ頓狂な声が出る。
昨日まで学校行ってた。って、どういうことだ?
あいつ、重要な部分の説明が全くないじゃないか…!
「さっきまでヨリヒトの所に居たじゃん。
キョウヘイ君はヨリヒトの家にずっと居たんじゃないの?」
「ヨリヒト…?ヨリヒトは、さっき帰ってなかった?」
全く話が噛み合ってない事と、キョウヘイの話に違和感を感じて眉をしかめる。
キョウヘイもすっかり食べるのを忘れて不思議そうにこちらを見てくるあたり、嘘ではないのだろう。
とにかく疑問ばかり出てくる思考を落ち着かせた。
「悪い。俺もヨリヒトから何も聞いてなくて。キョウヘイ君は昨日学校に行ってたってこと?」
「はい。」
「なるほど…。どこの学校?」
「はい。えっ、と。………あれ、俺、どこの高校、行ってたっけ……。」
何で思い出せないんだ。と落ち着きのない様子を見せる。
彼の様子を見るに、恐らくヨリヒトが何かしたのだろうか。キョウヘイが困惑した様子で頭を押さえた。
「俺、なんで、ここにいるんだっけ。どうして、なにも、思い出せないんだろう。」
手を額に当てながら目を見開くキョウヘイからは、汗が滲み出ている。
「ごめん。色々聞きすぎた。今日はもう休もう。」
キョウヘイの背中をさすって落ち着かせる。
とりあえず明日、ヨリヒトに聞きたい事が山程ある。あいつ何も知らせずに引き取らせやがって。
すぐにメッセージを送りつけ、キョウヘイを寝室に送った。
「アキラさん、明日も仕事、なんでしょ?俺、ソファでいいよ。」
ヨリヒトの所で話していた事を覚えていたのか、気を遣ってソファを指さす。
「ああ、いいよ遠慮しないで。今日はゆっくりしな。疲れただろ。」
「でも。」と言うキョウヘイに、「気にすんな。」と告げると大人しくベットの中に入っていった。
「電気はここだから。もう消すぞ。」
そう言って頷く彼に「おやすみ。」と言って電気を消した。
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