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「今日は準備が早かったですね。」
「うるせえ。」
どさ、と俺の横にヨリヒトが座る。
昨日の白衣姿とは違って完全な部屋着だった。
「今日はアキラとの先約があるの。カガリ、今日は帰ってくんない?」
「ええ、アキラさんの件が終わってからでいいですよ。事務所で待ってますので。」
「いや〜、だからまた今度って言ってんの。アポ取ってから来るのが常識でしょ?」
「ヤクザに常識もクソもないものでして。」
俺を挟んで言い合いを始める二人に、どうしていいのか分からず、ただ固まってしまう。
ていうかカガリさん、本物のヤクザなんだ…。
でも確かに歳の割には身につけてる物が高価すぎるよな。と納得できる部分もあり、ヨリヒトの言ってることが本当なんだと知らされる。
「んも〜〜、分かった。分かったから、後でね。」
「ありがとうございます。では事務所でお待ちしておりますね。」
「はいはーい。あとその話し方、虫唾が走るから金輪際するんじゃねえ。」
「何を仰る。いつも通りですよ。」
「はいはい。さっさと帰って。」
「では私はこれで。」と扉の前で深くお辞儀をしてカガリは去っていった。
「いや〜、ほんとごめん。すっかり寝こけちゃってさあ。変な奴も来ちゃって、大分待たせたね。」
カガリとは随分違う温度の接し方に少し違和感を感じた。
いくら取引先とは言え、彼は危険な存在ではないのだろうか。少なくともヨリヒトは、学生の時はああいった類の奴と関わるような奴ではなかった。
ぐるぐると、初めて抱く感情に飲み込まれそうになりながら、冷静に話しかけた。
「本当だよ。どれだけ待ったと思ってるんだ。
ていうかさっきのカガリって人は大丈夫なのか?危険な目に遭ってないだろうな。」
「やだアキラったら。キョウヘイだけじゃなくて俺の心配までしてくれるの〜?ほんと優しいんだから〜。」
「……俺は本気で心配してるんだよ。」
ぽんぽんっと軽快に俺の膝を叩きながら、ノリのいいテンションで話してたヨリヒトがきょとん。とした目で俺を見つめる。
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