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「あ、傘忘れた…。」
土間に着いてから傘がない事に気づいた。
「ねーねーアキラ、」
「ん。」
「傘入れてくれない?」
アキラ濡れたくないだろうから、嫌だって返ってきそうだなあ。と思いつつ胸の辺りで手を合わせてお願いした。
しかし返ってきた返事は「おう。」の一言で、アキラのビニール傘に入れて貰った。
大粒の雨は止む様子はなく、居眠りする前から変わらない勢いで降り続けていた。数歩歩いただけでスニーカーに雨が染み込むくらいだ。
男二人では少し狭いので、肩を寄せて歩いていたのだが、俺の方が身長が高いせいで歩くたび傘の骨が頭に当たった。「持つよ。」と言ってアキラから傘を取ると、そっけない態度をとってきた。
教室から出たあたりから目を合わせてくれないんだよな。
俺がアキラの顔を覗き込むと「なんだよ。」と眉間に皺を寄せた。
「なんか怒ってるのかなって。」
「怒ってねーよ。」
ふい、と顔を逸らされる。
「ふふ、こーやって並ぶと俺のが結構高いね。」
「そんなに変わらないだろ。」
「そう?アキラってどれくらいだっけ。」
「174センチくらい。」
「あーもうそれは全然変わる!俺178だもん。」
得意げに言うとアキラが俺を見て「すぐに追いついてやる。」と呟いた。
「いやいや、成長期はもう終わりでしょー。」
「言ったな。見てろよ。」
どん、と肩で押してきて、アキラは無邪気に笑った。
「卒業する頃にはキョウヘイ抜かしてやるよ。」
「えー無理無理。俺1000円かけるわ。」
悪戯な笑みを浮かべてアキラを見下ろすと、「背伸びすんじゃねえ。」とつま先で歩いていたのがバレて膝の裏を蹴られる。
「わっ、水溜り跳ねた!」
「ははっ。って、おわ!」
仕返しに肩でアキラを押すと、傘の外に出てしまった。
一瞬にしてびしょ濡れになったアキラを見て、思わず声を出して笑ってしまう。
「あはははっ、濡れすぎでしょ!」
「てめえ…。」
アキラは目の前の水溜りを蹴って水をはねさせた。
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