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そのご1。sideーs
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実習を終えた夕方、ヘトヘトになってようやくアパートの前にたどり着いた。
数日分の買い物を適当にコンビニで済ませたお陰で、
俺には似つかわしくない重たそうな大袋が、背中を力なく曲げさせる。
授業を任され、ずっと上げっぱなしだった腕は痛いし
初めての環境やたくさんの教師達の中で気を使い続けなければならないのは体力的というよりも、精神的な疲れに襲われるもので。
初日からこれじゃ、あと2週間なんてもつかな…。
何より俺の担当クラスがまさかの啓斗君のクラスだということもあり、
俺が教卓の前で話している最中にずっと窓際から向けられるビームでも出んじゃねえかってくらいの視線が痛くて
…それどころじゃなかった。
とりあえず早く帰って、横になりたい…。
そんな呑気な事を考えて、重たい足取りで階段を上り切るとそこにいたのは。
「…お疲れ様、菅沼さん。」
「……あー、ありがと。」
ま、そのうちくるとは思ってたよ。
まさか当日に、しかも家の前で待ち伏せされてるとは思わなかったけどな。
「お前制服着たまま待ち伏せはやめろよな。
鍵忘れてかーちゃん待つガキでもあるまいし。」
「…。」
…何か言えよ。
気まずいの嫌だからこうやって冗談みたいなこと言ってやってんのに。
この俺が啓斗君を気遣ってやってんだぞ。
なに、むくれてんだよ。
「なぁ、鍵開けたいんだけど。…そこどけよ。」
「嫌だ。どいたら菅沼さんまた逃げるだろ。」
逃げるってなんだよ。
そもそもここは、俺の家なのに。
「逃げねえよバカ。……ほら、どうせ上がってくんだろ。」
俺は右手に下げた無駄に重たいビニール袋を啓斗君の前に突き出して見せた。
そこには俺の酒と、少しのつまみと明日の弁当と
それから…
「啓斗君のジュースも買ってあんだよ。
ぬるくならないうちに家ん中入ろう?」
どうせ、こうなる事は予想がついていた。
…いや、違う。
啓斗君とまた、この場所で一緒に過ごす時間があればいいという、俺の単なる願望だ。
1人じゃ到底飲む気の起きない甘ったるいいちごオレは
紛れもなく啓斗君のことを思って啓斗君のために買ってきた品であり
例えば、この家に他の誰かが来る機会があったとしても
俺はこれをその人に飲ませてあげる気はさらさら無い。
啓斗君の俺を睨みつけるような鋭い視線は
ほんの少しだけ、柔らかいものに変わった。
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