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隠れた想い
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「なぁ兄ちゃん。今日泊まってくの?」
「んー、そうだな。教材とかはほとんど学校に置いてあるし、そうするかな。」
佐藤が帰った後、風呂上がりの2人はリビングでアイスを食べながら談笑をしていた。
「佐倉も泊まっていけば良かったのになぁ」
「佐倉にも佐倉の事情があるだろ。新学期早々外泊なんて親御さんも心配するだろうし。」
ポツリ、と口にした親しい兄の言葉に、齋藤は何かを言いたげにするも1度はぐっと出かかった言葉を堪え抑え込む。
しかし担任になったのだからいつかは知るだろう、とそれが遅かれ早かれの問題だと気づけばゆっくりと口を開いた。
「兄ちゃんさ、生徒の詳細、全部見た?」
「ん?いやまだ全部は見れてないな。寝るまでに全部頭に叩き込むつもりでは居るけど。」
新学期と言えど教師は様々な仕事があるだろう。それを手早く終わらせあの時間に帰宅していたのだから、さっと目を通すことしか出来ていないのは何となく分かっていた。
「…佐倉良い奴だけど、良い奴すぎるから、ちゃんと見ててあげてね。東雲先生。」
「あぁ…?そりゃ生徒だしそのつもりだけど…」
自分の慕った兄ならば、誰よりも頼れるこの人ならば、友人の事に気づいて上げられるかもしれない。
佐倉とちゃんと向き合ってくれるかもしれない。
いつも何かをひた隠し、何かに怯える彼を変えてあげられるかもしれない。
虐められ泣いていた自分を守ってくれた時の様に、守ってくれるかもしれない。
心も、身体も。
自分では1年かけても無理だった事でも、この人になら…
ただ、静かにそう願っていた。
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