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思い出さなくてもいい事を思い出して、晴れない湿った気分をどうにかしたくて
自分の部屋に帰るなり、冷蔵庫から缶チューハイを引っ掴んであおった。
一気に半分くらい飲んでから後悔した。
あ、だめだ、これ
逆効果だ。
憂うつな気分に酒を流し込んだら
今度は無性に腹が立ってきた。
カバンに着替えやスマホの充電器を詰め込み〝お泊まり〟の準備をしながら、
せっかくの週末に水を差さされて台無しにされた気がして、
改めて腹が立ってきて、
一人イライラしながら身支度をした。
一度芽生えると次から次へと怒りが湧いてきて、
もうとっくに過ぎた事だったはずのあの時の怒りまで蒸し返された。
クズ、クズって
いちいち言われなくたって自分が一番分かってんだよ
俺がゴミクズならお前は何なんだゲス野郎。
今朝の駅での事を見られてたのは別にいいんだ、
そんな事は別にいいけど、
〝金でももらってんの?〟
〝それとも、また〝オナホ〟にでもなってんの?〟
ふいに、
真木が言ったセリフが鮮明に甦って、思わず打ち消す様に首を振った。
苛立ちの他に、何か別な〝ざらつき〟を感じる
不快で、落ち着かなくなる。
でも、それが何なのか当てはまる言葉が見つからない。
本当なら今頃、清々しい気持ちで支度してたはずなのに、
そもそもあのマッシュがテキストなんか押し付けて来なきゃ、
真木なんかと話す事は無かったのに。
俺の怒りの矛先は、最終的に真木を飛び越えてマッシュへ向かった。
「よぉ。いらっしゃい。」
見知ったマンションのインターホンを押すと間を空けずにドアが開いて、
いつもと変わらない、柔らかい表情をした浅科さんが出迎えてくれた。
薄茶色の目が微かに弧を描いて俺を見ていた。
自分でも現金な奴だと思うけど、
その顔を見た途端、さっきまでの苛立ちが、少し中和された気がした。
「晩飯まだだろ?すぐ準備するから座ってろよ。」
リビングのドアを開けながら、浅科さんが俺の方を振り向いて言った。
俺はそれに頷いて、ソファに寄りかかる様に座った。
「どうした?」
「… は?何が?」
「何か浮かない顔してると思って。」
「…別に。何もないけど。」
「そうか?」
ほんの少し怪訝そうにこちらを見た顔は、すぐになんでもない風な表情に戻って、夕食の準備を始めた。
そんな浅科さんに、自分本位で複雑な気持ちが芽生える。
勘が鋭くて、気付いて欲しくない事は見抜くくせに
察して欲しい事にはなかなか気付いてくれない。
そんな、
自己中心的な思惑を腹に秘めながら、
俺はここに来る途中にコンビニで買ったウィスキーの瓶と炭酸水をテーブルに広げた。
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