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お泊まり
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〔 彼方 side 〕
皆でラーメンを食べたあとは解散となって 、 龍ちゃんとさとちゃんは帰っていった 。
俺も帰るか〜と宮原に背を向けたが 、 腕を掴まれてしまって動けない 。 どうしたんだろう 、 と見つめるとそっぽを向きながらボソボソと話し始めた 。
凛 : 「 …… ロールケーキ 、 買って帰ろうかと思ってるんだけど一人じゃ食べきれない 。 お前が食べなきゃ廃棄するしかないけど 。 」
食べきれないのにロールケーキ買うのか?
と思ったけど 、 聞かないことにした 。コンビニでデザート買って帰ろうと思っていたし丁度いいな 。
どんなケーキにするか聞くと 、 まだ決まってないと言ってまたそっぽを向く 。
照れてるんだろうけど何に照れてるのか分からない 。
「 じゃあ早く買いに行こう 、 宮原 。 」
凛 : 「 分かったから引っ張るなって 、 おい 。 」
グイグイ引っ張って宮原の家の方に向かう 。
後ろから聞こえてくる声にケラケラ笑いながら 、 スキップでも出来そうな嬉しさだった 。
まだ宮原と一緒に居れる 。
今日もお泊まりできるかもしれない 。
宮原は俺の心の声が読めるのかな 。
じゃなかったら甘いもの嫌いな宮原はロールケーキなんて買わない 。 と思いたい 。
家に着くまでの間 、 俺は人生で初めてってぐらいスキップをした 。
宮原は歩きにくいと言って怒っていたけど 。
そんなのどうでもいいぐらいにウキウキしていた 。
今日の朝まで泊まっていた部屋はやっぱり綺麗で 、 宮原が買ってくれたケーキを机の真ん中に置くと静かに待った 。
俺が一人で食べ始めると怒る奴がいるから 。
ケーキは皆で食べた方が美味しいだろって帰りの途中に言われて 、 先に食うなと釘を刺された 。
俺は犬じゃないから待てと言われなくても待つけど 、 好きな物が目の前にある状況で待つって拷問だ 。
やっと犬の気持ちが分かった気がする 。
凛 : 「 …… なんで正座してんの 。 」
「 食べないようにしようと思ったら 、 こうするしかなくて 。 」
凛 : 「 悪かったよ 。 ほら 、 食べるからこっち来い 。 」
テーブルの前に座った宮原が呆れ顔で隣を叩く 。
俺は飛びつくように隣を陣取り 、 ぴったり身体を寄せた 。
宮原の細長く白い指が箱を開けていく 。
その様子をじっと眺めながら 、 ワクワクとドキドキで胸が熱くなった 。
こんな風になんでもない日にケーキを食べることなんてなかったし 、 ましてや恋人と一緒に食べるなんて想像もしてなかった 。
初めてのことだらけでそわそわしてしまう 。
そんな俺に気付いたのか 、 宮原は取り分ける際にクリームが付いた指を差し出してくれた 。
なんの抵抗もなくペロッと舐めると 、 口の中に広がっていく甘さにだらしなく頬が落ちていく 。
凛 : 「 美味い? 」
「 うん 、 甘くて軽いから食べやすい 。 宮原も食べてみろよ 、 思ったより甘くないぞ 。 」
凛 : 「 俺はお前が食べてる姿で胸焼けするよ 。 」
紙皿に置いてくれたロールケーキにフォークを刺して 、 そのまま口に運ぶ 。
中に果物がいっぱい入ってて 、 甘いのに甘すぎない感じが俺には感動だった 。
デパートで買うような安めのロールケーキも好きだけど 、 コンビニに売ってるちょっとお高めのケーキも好きだ 。
宮原は食べてる俺を後ろから抱きしめて 、 甘えてるみたいだ 。
「 宮原は食べなくていいのか? 」
凛 : 「 しつこい 。 」
「 …… 。 」
甘えてる所に声をかけると機嫌が悪くなるみたい 。
あんまり話しかけないでおこう 。
ワンロール食べ終えた俺は心も身体も満たされて 、 宮原の胸に背中を預けた 。
お皿やフォークは宮原が洗ってくれたし 、 ゴミも捨ててくれた 。 対して俺は何もしてない 。
食べ終わったあとは余韻に浸って終わった 。
俺だって宮原に尽くしたいし 、 捨てられないようにしたいとは思うけど 。
隙が無さすぎて困る 。
「 …… 宮原ぁ 、 」
凛 : 「 なに 。 」
宮原はいつも通り冷たいし 。
俺のこと放って小説なんか読んでさ 、 少しは構ってくれてもいいじゃん 。
なんてめんどくさいことは言えないので心の中にしまっておく 。
「 なにもなぁい 。 そろそろ帰ろうかなって思っただけ 、 」
凛 : 「 …… あっそ 。 」
あっそ?なんだよそれ 、 好きにしろって感じ?
無関心そうだとは思ってたけど 、 付き合ってもこんな感じなのかよ 。 ほんとに俺と付き合っていこうと思ってんのかな 。
怒りと寂しさが同時に来てしまう 。
いつもなら笑って冷たいぞって返せるのに 。
「 ……… じゃあ 、 また明日 、 な 。 」
あまり深く考えないようにして 、 財布とスマホを手に取る 。
こういう奴だと分かって付き合ってるんだから 、 いちいち真に受けたらダメだ 。
心の中で自分に説教をして立ち上がった 。
ほんとはお泊まりしたかったんだけどな 。
一緒の匂いになって 、 また抱きしめられたまま眠りたかった 。 あんなに幸せだったのに一人になると 、 すっごく寂しくなる 。
今日は頑張って一人で寝て 、 明日はお泊まりしたいって言えるようにしよう 。
自分に喝を入れて 、 いつもの笑顔で振り向いた 。
「 じゃあ 、 お邪魔しました 。 」
凛 : 「 ん 。 」
あ〜失敗したな 。 この靴 、 一回脱ぐと履くの面倒なんだった 。
仕方なく玄関で腰掛けて靴を履いた 。
後ろにいたはずの宮原も俺の隣に腰掛けて 、 じっと見つめてくる 。 いつも無表情だから慣れたと思ったのに 、 圧がすごく感じる 。
「 …… どうした? 」
靴紐を結びながら問いかけると 、 何も言わずに俺を抱っこしてリビングへと戻り始める 。
いきなりのことで抵抗もできずにソファへと下ろされ 、 履いていた靴は宮原の手の中に 。
あれ?と首を傾げると 、 いつもの顔で宮原は言う 。
凛 : 「 今日も泊まれよ 。 」
「 …… へ? 」
凛 : 「 一緒に寝ろって言ってんの 。 」
「 ……… ふは 、 なんだよ〜可愛いところもあるじゃん 。 」
宮原も寂しかったのかな 。
可愛いやつだな〜と頭を撫でると 、 調子に乗るなと怒られたので大人しく手を下げた 。
よっしゃ 、 今日も宮原の家でお泊まりだ 。
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