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〔 彼方 side 〕
トイレの個室に篭ってから随分と時間が経った 。
スマホで時刻を確認すると 、 飛び出して二十分が経ったようだ 。
きっと 、 龍ちゃんとさとちゃんが心配してる 。
早く戻らなきゃいけないと思うのに 、 グズグズになった俺の心は立ち上がらない 。
凛が心配してなければいいやって思ってしまう 。
初めて授業サボっちゃった 。
入学してから休まないって決めてたのに 、 あっさりサボっちゃってさ 。
俺ってほんとにダメだなぁ 。
「 …… 会いたくない 。 」
今は一人にならなきゃ 。
こんな情けない顔 、 見せたくないし 。 嫉妬したなんて思われたくない 。
臆病になってかっこ悪いけど 、 何もやる気が出ないんだ 。
ただ便器の上に座ってぼ〜っとしていた 。
スマホを開くのも怖くて 、 声を殺して潜んでいた 。
探してるかな 。
俺が急に居なくなって 、 少しは寂しいって思ってくれてるかな 。 あまり期待はしてないけど 。
? : 「 宮原と林さんが中庭で飯食ってたぜ 。 」
? : 「 まじ?いいな〜、俺も林さんと飯食いてぇよ 。 」
だんだんと大きくなっていく声 。
トイレに近付いてきてるんだとすぐに分かった 。
また聞きたくない話 。
? : 「 お前じゃ無理だって 、 宮原ほどの美形じゃないと林さんも靡かねぇよ 。 」
? : 「 それもそうだよな〜 。 」
? : 「 あのまま付き合うんじゃねぇの?めちゃくちゃお似合いだったし 。 」
? : 「 ついに彼氏持ちか〜 。 」
俺の彼氏だって言えればいいのに 。
でも凛が嫌がることをしようとは思わないし 、 我慢すればいいだけだし 。
まだ大丈夫だけどさ 。
やっぱり 、 そんなの聞きたくない 。
凛と付き合ってるのは俺だもん 。
俺の方が林さんよりずっとずっと凛を好きだし 、 色んなこと知ってるのに 。
もう心が折れそう 。
知らない人達が離れていくと 、 俺もすぐにトイレを出た 。
今日は帰ろう 。
この後の授業は一コマだけだし 、 重要なやつじゃないし 。
凛との予定があったのは仕方ない 、 断ろう 。
スマホを取り出して凛に連絡を入れると 、 返信が怖いので電源を落とした 。
「 …… お泊まり 、 したかったな 。 」
連絡を入れる時に見えた龍ちゃんとさとちゃんからの心配するメッセージ 。
きっと勘づいてるだろうな 、 二人とも 。
さっきの部屋に戻り 、 誰もいないことを確認してから荷物を取って教室を出た 。
講師も生徒もいない廊下を一人でトボトボ歩く 。
大学を出てから少しでも気分を晴らそうとコンビニに寄って 、 スイーツをたくさん買った 。
シュークリームとロールケーキ 、 ミルクレープ 、 プリン 、 駄菓子 、 飴 、 クッキー 、 コーラ 。
いつも俺を励ましてくれるものだらけで 、 袋の重さなんて気にならないはずなのに 。
今日だけは 、 少し鬱陶しかった 。
家に帰ると 、 凛の匂いは当然しない 。
少し埃が被っていて 、 清潔感はあまりない 。
スイーツとコーラを冷蔵庫に入れて 、 すぐにシャワーを浴びた 。 もし宮原から呼び出されたら 、 駆け付けられるように 。
そんなこと 、 あるわけないけど 。
ドライヤーはしないまま 、 黙々と駄菓子を食べた 。
一人の部屋は寂しくて 、 涙がぽたぽたと流れていく 。
男の俺じゃダメだったのかな 。
林さんみたいに可愛くて柔らかい人の方が良かったのかな 。
色んな思いがぐちゃぐちゃになる 。
泣き腫らした顔を見られたくなくて 、 凛に呼ばれたらって思っていたのにベッドに入ってすぐに眠った 。
余計なことを考えたら 、 きっと面倒な男になるから 。
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