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〔 彼方 side 〕
すぐに無くなると思っていた噂は 、 どんどん広がっていった 。 最初は教室の中だけだったけど 、 今では先輩や先生にまで知れ渡っている 。
何度か廊下で揶揄われたし 、 あまりいい気はしない 。
でも 、 その度に守ってくれる友人と恋人がいる 。
さとちゃんと龍ちゃんは相変わらず一緒に居てくれるし 、 凛は俺を守る為って 、 部屋から部屋への移動の際は送り迎えをしてくれる 。
林さんは睨んでくるし 、 怖い気持ちはあるけど 。
それでも 、 俺にはみんながいるからへっちゃらだ 。
凪 : 「 彼方 、 久しぶりだな 。 」
大学の門を出てみんなで帰っている途中 、 後ろから声をかけられた 。 振り向いてみると 、 入学した時に少しだけ仲が良くなった 、 「 横峯 凪 」の姿 。
この男は龍ちゃんほどではないけれど 、 イケメンで爽やかな男だ 。 全身オシャレで 、 背も高くて 、 友達も多くて 。 女遊びも激しい方じゃないから 、 白王子なんて言われている 。
この前 、 女の子から告白されている所を見てしまったんだ 。
「 うわ 、 ビックリした!久しぶりだな〜 、 横峯! 」
さとちゃんも知っているようで 、 二人は挨拶を交わす 。
龍ちゃんと凛は 、 ただ見守っている 。
なんだか久しぶりに友達から話しかけられた気がする 。
好奇の目や軽蔑の目を向けられていたから 、 なんだかむず痒い 。
凪 : 「 男好きだなんだって噂を聞いたから 、 大丈夫かと思ってな 。 」
「 俺は大丈夫だ 、 ありがとうな! 」
凪 : 「 はは 、 そうか 。 実際問題 、 恋愛対象は男なわけ? 」
横峯の言葉に 、 空気がピリッと乾いた 。
特にさとちゃんは眉を寄せて 、 睨むように視線を鋭くさせる 。 一番 、 心配してくれているからだろうけど 。
凛もなにか言いたげに口を開こうとする 。
だけど 、 悪気があっての言葉じゃないことぐらい分かる 。
ただの興味にすぎない 。
横峯は 、 ストレートに言葉を発するだけだ 。
「 うん 、 恋愛対象も性的対象も男 。 どこから拗れたのか分かんないけどな〜 。 」
凪 : 「 そんな感じはしてた 。 男から好かれそうな顔してるし 、 男の中では小柄だもんな 。 」
「 もう少し身長があれば良かったんだけどな! 」
横峯は笑って 、 俺の頭をぽんぽんと撫でた 。
身長をバカにするわけでもない 、 弟を慰めるような優しい手つき 。
誰にでも平等に優しい横峯 。
初めは話しかけてくれたことに驚いたし 、 あんまり関わりがないから寂しいとは思っていたけど 。
こうしてまた話せて 、 すごく嬉しい 。
凪 : 「 困ったことがあったら 、 いつでも相談して 。 彼方は溜め込むから 、 俺はすごい心配 。 」
「 ほんとか?頼りになるな〜 、 ありがとう 。 」
凪 : 「 どういたしまして 。 じゃあ 、 また明日な 。 」
「 じゃあな! 」
最後に俺の頭をくしゃっと撫でて 、 横峯は帰っていった 。
兄ちゃんがいたらあんな感じがいいな 。
そう思って 、 横峯の姿が見えなくなるまで大きく手を振る 。
そろそろ帰るぞと凛に言われて 、 またみんなで話しながら歩く 。 最初よりは 、 多少だけど空気が軽くなった 。 ような気がする 。
凛の家に着くと 、 揃って手を洗ってうがいをした 。
水が冷たいなって笑いあう 。
ただそれだけでも 、 幸せな気持ちになる 。
夜ご飯は宮原が作ってくれるから 、 俺は洗濯物を取り込んで畳んだり 、 お風呂を洗ったりする 。
分担とまでは言えないけど 、 出来るだけのことはやっているつもりだ 。
凛 : 「 彼方 、 味見 。 」
「 するする!今日も美味そうだな〜 、 」
後ろからぎゅっと抱きしめて 、 凛が作った野菜炒めの味見 。 美味いって呟くと 、 ありがとうってキスをしてくれる 。
それが嬉しいから 、 いつも味見させてくれって強請るんだ 。
シンプルな味付けの野菜炒めと 、 もやしの味噌汁 。 ホカホカの白米が並んだ夕食 。
俺のために野菜も肉も魚も揃えてくれる優しさが嬉しい 。
「 ん 、 今日も美味い! 」
凛 : 「 明日は魚にするか … 焼き魚 、 好きだろ? 」
「 凛が作るならなんでも好きだけどな〜 。 」
そう言うと 、 なんでもは困ると怒られる 。
優しい凛は 、 いつでも俺のためだって真剣に考えてくれるからほんとに優しい 。
レシピ本を捲る凛を眺めながら 、 改めてすごく好きだなと実感した 。
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