アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
触れる体温、ぬめる指先
-
サバゲーショップ「ユニーク」
都内有数のサバゲー用品の店舗であり、室内フィールドがあることもあってサバゲーマーの中では知るとぞ知るお店だったりする。
僕、姫宮時雨はここの店員で、主にお客さんの銃の修理や体験会の講師をやったりしている。
今、隣で勉強をしている僕の恋人、波瀬騎士くんとは体験会で知りあった仲。
(確か、友達の誘いできたって言ってたなぁ)
それまで、サバゲーなんて知らなかったって前に言ってたから、本当にその友人くんには感謝しかない。
「……なに?」
「な、んでもないです」
じーっと見つめ過ぎたのか、顔を上げたこちらを見たナイトくんに、びくっと体が過剰反応した。
ナイトくんの目は普通の人に比べると鋭いせいか、見つめられてるだけで首元に刃物を突きつけられているような本能的な危機感を覚える。
他の人はそれが恐怖心となって襲ってくるらしく、ナイトくんの周りだけ人がいなくなるということはあるあるだ。
僕も最初はベビに睨まれたカエルのようになっていたけど、視線さえ慣れてしまえば、本来のナイトくんが見えてくる。
優しくて、カッコイイ、名前通り騎士のような彼の本質が。
僕はそこに惚れ込んだ。
「あっ、すまねぇ。睨んでたか?」
ほら、今も僕を恐がらせたと思って顔ごと逸らしてくれる。
それでも僕の方を見たくて、ちらちらと視線を投げかけてくる姿はとてもかわいい。
「ううん。僕こそ過剰に反応してすみません」
謝りながら、そっとナイトくんの髪に手を伸ばす。
少し固くて、若干指通りの悪い茶色の髪。染めているせいで傷んでいるのかと思って前に話を聞いたら、染めている訳ではなく、洗髪の問題だった。
(洗髪の時に水でしか使ってないと聞いた時は驚いたな……)
「ナイトくん、きちんとシャンプーを付けて髪を洗ってますか?」
「っ! いや、その……」
「せっかく綺麗な茶髪なのに、勿体ないですよ」
するすると髪を撫でていた指を頬へと滑らせる。
柔らかく、弾力のある肌はとても触り心地が良くて、ついつい色んな部分に触れてしまう。
「んっ……」
人とと関わることが少なく、肌に受けるのは拳ばかりだったせいか、ナイトくんは優しく触られるのに慣れていない。
その影響もあるのか、僕がこうやって触ると目じりが少し下がり、困ったような表情を浮かべる。
なんだか、少し幼く見えて可愛らしいと思ってしまうのは、惚れた弱みだろうか?
「時雨さ……くすぐってぇ」
「あっ……!」
あまりにも無遠慮に触っていたことに気付き、ハッと我に返る。
いくら恋人とは言え、べたべたと触られていい気分はしない。
しかも、僕の手はトイガンの修理などをしているせいか、変なところに豆があるし、あかぎれで少しざらついている部分もある。
そんな手で、キレイなナイトくんの顔を触っていたなんて……。
(僕はなんてことを!)
今まで散々触っていたのに、何を言ってるんだと思う部分もある。
けど、気づいてしまった途端、自分の触っているところからナイトくんが汚れていくような気がして……思考が悪いほうへと転がり始める。
こうなると、どんどんネガティブ思考になるのが僕の悪い癖だ。
「す、すみません!!」
いたたまれなくなってしまい、思いきり手を引っ込める。
が、その手は掴まれ戻されてしまった。
「くすぐってぇだけだ……別に嫌じゃない」
「け、けど……僕なんかが触ったらナイトくんの肌が汚れちゃいます」
「はぁ? どうしてあんたが触るとオレが汚れんだよ」
「だって、僕の手、ごつごつしてるし、あかぎれしてるし、そんな指でナイトくんのキレイな肌を触るなんて……うわ!」
ギラッとナイトくんの瞳が光ったかと思うと、掴まれていた手首を思いきり引かれ……。
「ひゃ!」
人差し指に赤い舌が絡まった。
わざと見せつけるように口を開け、指に舌を絡めてくるナイトくんの姿はエロくてかっこいい。
ぬめりとした感覚と熱い吐息が手のひらに触れた瞬間、ぞわりとした痺れが全身に広がり、下半身が妙に熱くなるのを感じた。
「ななな、ナイトくん! 離して! ナイトくんをこれ以上汚したくないです!」
「誰が離すか」
反射的に逃げようとするとよけい強い力で掴まれ、さらに指を舐められる。
中指の第二関節を甘噛みされ、そのまま爪の付け根を舐められた瞬間、最後の抵抗の力が抜け横にあった机にもたれかかるようになってしまう。
けど、視線は自分の指を舐め続けるナイト君から離せない。
「仮に時雨さんが触って汚れるなら、とっくに汚れきってるだろ。今更気にすることかよ」
音を立てて引き抜かれた手を引き、僕を腕の中に収めたナイトくんは、そっと頬ずりをしてくる。
視線は鋭いけど、眼差しは春の日差しのように優しく温かい。
「けどまぁ、それで時雨さんと同じになれんなら、オレにとってこれ以上に幸せなことはねぇ」
「ナイト……くん」
上から降ってくるキスは、とっても甘くてとろけそうなほど気持ちがいい。
僕もこうやって君に触れていたら、君と同じ色に染まれるかな……?
そうなれたらいいなと近づいてくる唇に、自分のを近付けた瞬間――。
「店でいちゃくつな~!」
――バン、バン!
「いで!」
「いたっ!」
思いきり頭をバインダーで叩かれた。
涙目で後ろを見ると、幼馴染の王子龍平おうじりゅうへいがニヤニヤしながら仁王立ちで立っていた。
「俺の勤務中にいちゃこらしないでよ。邪魔したくなるじゃん」
「現在進行形で邪魔してんだろうが!」
「あ、ごめんごめん。次も邪魔するから遠慮なくいちゃちゃしていいよ~」
「できるか!!」
ぎらりと抜身のナイフのような殺気をナイトくんが放っても、龍平はへらりと笑うだけで怖がっている素振りもみせない。
ナイトくんいわく、龍平みたいな人はどこかネジが飛んでるらしい。
そういえば、前に幼馴染がナイトくんの嫌がる顔は最高に性欲がそそるのだとか、なんとか言ってたような……。
「ごめんね、ナイトくん」
「は? 時雨さんは悪くねぇだろ。問題はこの変態野郎だ」
「俺はこんなところでラブラブする二人が悪いと思うけどな~」
「なら、帰る」
がたっと大きな音を立ててナイト君が席から立ち上がる。
僕の腰に手を回したまま。
「時雨さん、今日泊まっていいか?」
「い、いいけど」
「そんじゃ、続きは時雨さんの家でな」
耳元でそっと囁かれ、顔に血液が一気に集中する。
こういう時だけ、いつもより低い声でいうのはずるいと思う。
「もう~そんな風に宣言されると、後で突撃しちゃうよ~」
「残念だったな。オレたちは今から忙しいから、インターホン鳴らされてもわかんねぇぞ」
「そんじゃ、明日時雨にじっくりたっぷり聞くことにするよ」
「はぁ!? 時雨さんに迷惑かけんなこの変態!!」
「ふっふ~、それならナイトくんおっしえってね~」
「誰が教えるか。あと名前を呼ぶんじゃねぇ!」
言い合いを始めてしまった二人にばれないよう、こっそりとナイトくんに舐められた指先に舌を這わす。
ざわりとした不快感と共に感じた、愛しい恋人の香りに思わず顔がほころんだ。
「ナイトくんの味だ……」
小さく呟いた声は、にぎやかな空気の中にそっと消えていったのだった――。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 17