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顔遊び
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昼下がりのユニーク。
平日ということもあって、お客さんも龍平くん目当てのお客さんばかり。
なので、僕はいつもナイトくんにサバゲーを教えている机でドックタグを彫っていた。
細かい作業が得意な僕は、ドックタグに模様を彫ってお客さんやサバゲー仲間に売っている。
龍平やサバゲー仲間がつけてSNSにあげたりしてくれたおかげか、ありがたいことに色んな人から依頼がきている。
今回は、常連のお客さんに頼まれたなでしこ。彼女が好きな花だからといつもは無表情の顔を少し赤くした彼の姿はとても微笑ましかった。
「さて、と……」
機材を取り出し、転写した線に合わせてプレートを削っていく。正確にかつ、繊細に。細かいことが好きな僕にとって、時間を忘れられるひと時だ。
「ふー」
半分ほど掘ったところで額に浮かんだ汗を拭う。思ったよりもきれい掘りこまれた線に、思わず笑みを浮かべてしまう。
「やっぱり時雨さんの彫物はすげぇな」
「っ!」
聞こえた低い声に、顔を跳ね上げると物珍しそうに僕の作業を覗き込む恋人の姿があった。
予想外の出来事だったせいか、素っ頓狂な声が僕の口から飛び出す。
「な、ナイトくん!? ……なんでこんな時間に」
「せんせーが風邪引いて授業がなくなったから、早めにきた。オレに気にしねぇで作業してていいぜ」
「うん、ありがとう。そしたら、もうちょっとだから少し待ってて」
「おう」
そう言われたので、作業を進めようとしたんだけど……。
「……」
「……」
指先に強いナイトくんの視線を感じて、なんとも言えない気分になる。
いつもよりも早く会えたのはとても嬉しいが、作業を間近で見られるのに抵抗があるのも事実。
気にせずに頑張って掘ろうとするけど、やっぱり集中できない。
僕は恐る恐る目線を上げ、震える口を開いた。
「えっと、ナイトくん。見られてるとやりずらい……です」
「あ、わりぃ……」
そらされた視線に少しの寂しさを感じつつ、僕は止まっていた手を動かした。
コリコリと削る音が僕の集中力を再びタグへと向けていく。
浅く掘ったり深く掘ったりして陰影をつけ、細かい装飾でより華やかに。
「終わった……」
タグの上に散る欠片を払うと、二輪の撫子が姿を現す。
思った以上の出来に自分自身で感心してしまった。
「ナイトくん、みてくださ……」
無性に自慢がしたくなって、傍らにいる恋人へ視線を移すと……机に突っ伏して寝息を立てていた。彼の下敷きになっているノートと無造作に転がったシャープペンシルを見ると、どうやら勉強をしながら眠ってしまったみたいだ。
「珍しい……」
ナイトくんが僕の部屋に泊まりにくると、なんだかんだでエッチをしてしまうせいか僕の方が寝てしまうことが多く、起きるのも彼の方が早い。
そのせいか、ナイトくんの寝顔は僕の中でレアなものになっていたりする。
「かわいいな……」
ナイフみたいな目が閉じているせいか、幼さを感じる顔を覗き込む。
思ったよりも長いまつ毛。微かに動く形の良い唇。筋の通った鼻。それらのパーツがバランスよく配置された顔。世の中で言うイケメンの部類に入っててもおかしくない顔立ちだ。
こんなかっこいい人が自分の恋人なんて、にやにやしてしまう。
「今なら落書きしてもバレないかな……」
隣の席に移って、ちょいと頬を指でつつく。ぷにぷにとマシュマロみたいな弾力の肌は触り心地が良くて、癖になりそうだ。
もうちょっと触りたい。そう思って指を伸ばした途端。
「なにしてるんだ……」
「あっ」
目を開けたナイトくんに手を掴まれてしまった。
寝起きのせいか、いつもより深い色の茶色の瞳が戸惑った僕の姿を映す。
「えっと……ナイトくんの肌、触り心地がよくて」
「時雨さんって、ほんとオレのこと触るの好きだよな」
「ナイトくんの肌が気持ちいいのがいけないんです」
ぷくっと頬を膨らますと、伸びてきたナイトくんの指に頬を押された。
ぷにぷにと突かれたと思ったら、モチのように伸ばされる。最後には両側から手のひらで押されたかと思ったら吹き出された。
「ぷっ! あははは!! おもしろっ!」
子供のように笑いこけるナイトくんは新鮮で、どきりと心臓が跳ねた。恋人の新たな発見をするたびに、輝いた記憶が僕の中に刻まれる。
まるで、宝物みたいだ。
「お、彫れたのか? 見せてくれよ」
「はい、力作なんです」
笑顔で手の中にあるプレートをナイトくんに見せる。
ぼんやりとプレートに映った僕の顔には、嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
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