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「ナーイトくん!」
ユニークの倉庫で作業をしていると、どしっと何かが背中にのしかかってくる。
一番聞きたくない声と、暑苦しい重みにびきっと額に青筋が浮かび上がるのが嫌でもわかった。
思った以上に低い声が、オレの口から零れ落ちる。
「勝手にのしかかってくんじゃねぇよ変態王子! あと名前呼ぶんじゃねぇ!」
「え~、それなら、も~っとぎゅ~っとしちゃう!」
「や~め~ろ!」
暴れるが、全く効果なし。余計絡みついてくる変態に腹パンチを入れようとするが、難なく避けられてしまう。
「避けんじゃねぇ、クソが!!」
「当たったら痛いじゃんよ~」
「てめぇは一発くらい殴られるくらいがちょうどいいんだよ!」
「理不尽だ~!」
「なら、離れろよ!!」
そんなことをしてると、騒ぎに気付いた時雨さんがひょっこりと顔を出す。
王子とオレがケンカするのはよくあることだが、いつも彼は蒼い目を零れんばかりに見開いて、両手を振りながらオレたちの仲裁に入る。
「龍平くん、ナイトくん、ケンカはダメです!!」
「こいつが絡んでくんだよ!」
「俺はナイト君と仲良くしたいだけなのに……」
「ぜってぇ、ありえねぇ! あとだから名前呼ぶな!!」
「そういえば、なんで時雨は名前呼びOKで俺はダメなの?」
「人の話を聞け!!」
怒鳴った瞬間、変態じゃなくて時雨さんが飛び上がった。
なんとかその場にとどまったが、会った当初だったらきっと悲鳴を上げて店の方へ戻っていただろう。
恋人の成長を喜べばいいのか、なんというのか……微妙な心境だ。
「時雨さん。ごめん……驚かすつもりはなくて」
「い、いえ……だい、じょうぶです」
慌てて近づくと、涙ぐんでいるが無理に笑みを浮かべているのが痛々しい。
こんな状況だが、きゅんと胸のあたりが締め付けられる感触がして、思わず胸元を掴んでしまった。
「わ~、恋人泣かしてる~」
「誰のせいだと!」
「ひっ!」
「ご、ごめん……」
これ以上、恋人を怖がらせたくなくて、時雨さんを腕の中に収めると優しく頭を撫でてやる。
無意識なのか、ぎゅうと服を掴んでくる時雨さんがとてもかわいい。
周りの変態という名の外野が、とてつもなくうるさいが。
「ねぇ~、なんで俺は名前呼びだめなの~。ねぇ~ナイト君~」
「……てめぇがきれーだからよ」
「それだけ? ほんとに?」
「……」
ニヤニヤと笑みを浮かべる王子が、ムカつく。絶対分かって言ってるな。こいつ。
ここでうるさいと蹴飛ばしてもよかったが、後々絡まれても面倒なので嫌々ながらも口を開く。
「……オレはずっと目つきのせいで色んな奴とケンカしてきたし、この性格だ」
『騎士って名前はね、あんたの死んだ父さんが大切な人を守れるようにってつけたんだよ』
不意に昔、おふくろが言ってた言葉を思い出す。
もしも死んだ親父が生きていたなら、今のオレを見てどう思うのだろうか?
「だから、今のオレにこの名前はふさわしくねぇから」
名前が嫌いなわけではない。けど、呼ばれるこう言われているようにも聞こえるのだ。
お前は騎士にふさわしくない人間、だと。
「なら、なんで時雨はいいのさ」
王子に言われ、ふっと思い出したのは初めてユニークに来た日。
あの時、時雨さんに言われた言葉はきっとオレの中に残り続ける。
オレは返答を待っている奴に薄く笑みを浮かべると口を開いた。
「……時雨さんは、特別だからに決まってんだろ」
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