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看病
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朝、ぼんやりとしながら目を開ける。
横を向くと、僕を抱き枕のようにして眠るナイトくん。彼は週末泊まりにくるのがいつの間にか当たり前になってしまった。
「緊張しっぱなしだったのが懐かしいな……」
色んなことを失敗して、呆れられるほど迷惑をかけた。
それでも、恋人は優しく僕を待ってくれた。きっとこんな素敵な人、この先ずっと現れないだろう。
「あっち……」
眉間にしわを寄せながら、ナイトくんが目を開ける。動いた拍子に、じんわりと浮いた汗が彼の首筋を滑り落ちていく。
「おはようございます、ナイトくん」
「……」
「どうかしましたか?」
寝起きのせいか、焦点が合ってなかったナイトくんの手が僕に伸びてきてそっと額に触れる。
「……?」
首を傾げた後、頬、首筋と手が下りていく。朝から体を重ねることもあると言えばあるが、今日はどこか体が重い。だから遠慮したくて、口を開いたら。
「時雨さん、熱あるんじゃね?」
「へ?」
予想外の言葉がナイトくんから出て、僕は目をぱちくちさせてしまったのだった。
◇
「……本当だ」
電子音と共に脇から引き抜いた体温計に表示された数字は38.4。完全に風邪だった。
「うぅ……」
自覚した途端、体がさらに重くなって頭も痛くなってきた。ナイトくんが起きたため広くなった布団に一人潜ると、氷嚢片手にナイトくんが戻ってくる。
「時雨さん、どうだった?」
「ナイトくんの予想通り、熱がありました」
「……オレが昨日ムリさせちまったからか?」
「いえ、最近寒暖差が激しかったですから、そのせいですよ」
「……」
納得いかないのか、どこか不機嫌そうな恋人の頭をそっと撫でる。
「移すと悪いですから、ナイトくんは家に帰っていいですよ」
「いや、看病する」
「けど……」
言いよどむと、ぺちっと冷えピタを額に貼られる。
有無を言わさない鋭い目なのに、瞳の奥には心配が見え隠れして忙しない。
自分の方が大人なんだから。いつも迷惑かけてるのに、こんな時まで迷惑をかけていいのだろうか?
色んな感情がぐるぐると周り、言葉にならなくなる。
「病人は迷惑かけてなんぼだろ。申し訳ねぇって思うなら、黙って看病されて早く治しやがれ」
「っ!」
強い言葉なのに、とても優しい響きで涙が出そうになった。
なんでこの人は、僕の欲しい言葉がわかるのだろうか?
「一人だと心細いので……看病してください」
「最初からそのつもりだ。飯作ってくるから、少し寝てろ」
ぐしゃぐしゃと僕の頭を撫でた後、ナイトくんは部屋を出て行ってしまった。
静寂の奥に聞こえる音が、寂しさを癒してくれる。
「こうやって看病してもらうの、久々ですね……」
ゆっくりと目を閉じると、眠気が襲ってきた。
普段なら熱を出した時、いつも以上に強く感じる静寂が怖くて寝れないことがあったが、今回は大丈夫そうだ。
「今度お礼をしないと……」
何ならナイトくんは喜んでくれるかな?
やけにガンガン言っている音を聞きながら、僕は眠りについたのだった。
(時雨さん)
(ん……?)
(メシ。食える?)
(……)
(どうした?)
(……カレーの具材並みに野菜がごろごろしてますけど、煮物ですか?)
(いや、野菜炒め。時雨さんみてぇに綺麗な飯は作れねぇけど、味は大丈夫だったから)
(あ、ありがとうございます……)
――――
火は通っていたそうです。
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