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俺はつくづく男運が悪い。
腐れ縁の幼馴染には事あるごとに利用され、
生まれて初めて燃える様な恋心を抱いた高校時代の同級生は…当時の担任に恋をしていた。
女に困っていた訳じゃない言うと嫌味に聞こえがちだが、
正直なところ本当なんだから仕方ない。
だが、どうにも高校時代の
――男、それも親友に抱いてしまった想いはいつまで経っても熱が冷めず
たった一人、地元を離れて彼を見ないで済む大学へと進学した。
…とはいっても。
もう何年経ってるっつーんだよ。
いい加減前に進めよ俺も。
気付けば大学生活も残り半年を切っている。
程々に遊びを覚えていく中で、いつまでも脳裏に張り付く君の苦しそうな笑顔。
…結婚決まってた担任に恋してるようじゃ、報われるわけねえのにさ。
それでも良い生徒で居たいと必死に優等生を貫くのは
一体どれほど辛かったんだろうか。
今日も度数の高い酒に手を伸ばす。
これっぽっちも強くない癖に。すぐに泥酔するとわかっていても、それでも。
こうでもしないと、君を思い出してまた胸が痛むんだ。
家に常備されているそれでは物足りず
肌寒い夜風に吹かれ、既におぼつかない足取りのまま
ふと目に着いたバーの扉を開けた。
と、そこに居たのは――…。
「え……?」
カウンターの端で一人ぽつんと座る後ろ姿。
薄暗い照明に照らされて赤味を増した茶髪には
凄く見覚えがあった。
忘れた事など無い、少し猫背なその背中。
嘘だ
なんでこんな所に?
落ち着いたトーンの「いらっしゃい」には見向きもしないで
案内された席には目もくれないで
俺はただ、その背中に向かい一直線に走る。
「とーま!!」
がばりと背中に抱き着いた。
普段なら絶対に出来なかったと思うから
今日ばかりは、苦手な酒に感謝してやってもいい。
だが、突然の衝撃にビクッと跳ねた身体は
俺の知っている彼より少し小さくて。
「……とーま縮んだ?」
「いやいやいや、誰ですかあなた。」
「っ、?!誰!!」
「こっちのセリフなんですが?!」
相変わらず身体は怠いのに
頭だけが急激に冷めていく。
「すんません人違いでした。」
「ですよね、知ってますよ。」
「…っす。」
くつくつと笑いを堪えるカウンター越しの店員は、何が面白いのか
俺を改めて、小柄な男の隣に案内したのだった。
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