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土曜の夜ともあれば、駅から近いここら一帯はより一層賑やかさを増すものだ。
昨夜の失敗を繰り返さないよう、徒歩圏内にも関わらず、迷わず車のエンジンをつけた。
21時40分、少し高いけど空いているパーキングに車をとめて
21時50分、財布の中身を確認し、車を降りる。
そして、21時55分。
まだ記憶に新しい扉を開ければ
そこに──
いた。
また、一番隅の席。
カウンターの端
少し猫背の君。
やっぱり、あいつの面影なんて映らない。
俺はただ君に会いに来た。
マスターは今日もあれんの前で静かに笑っている。
大人の男とは、きっとこういう人のことを言うんだろう。
余裕があると言うか、魅力的と言うか。
同性の俺でも惹き込まれるような妖美な雰囲気。
マスターと話すあれんは
照れたように微笑んで
俺に向けたのとは違う、柔らかな表情で
熱を帯びた瞳で見上げていて。
はは、マジかよ。
嘘だろ。
金縛りにでもあったかのように
あれんに向かっていた足はぴたりと動くことを忘れる。
…昔から、勘は鋭い方だった。
「いらっしゃい。おや?君は昨日の…。」
俺に気がついたマスターは
あれんと話すのを辞めて俺へと視線を向ける。
つられて振り向いたあれんは
先程までのうっとりとした瞳ではなく、くりんとまん丸のそれに変えて俺を捕えた。
「本当に来た…。」
あぁ、俺には笑ってくれないのか。
昼の一瞬だけ浮かべてくれた笑顔が
ずっと瞼の裏に張り付いていたのに
マスターに見せていたその顔を
俺には見せてくれないんだな。
なんか俺、馬鹿みたいじゃん。
身体がズン…と重くなる。
2人の時間、邪魔してごめん。
「昨日はご迷惑お掛けしました。
…今日は彼に、借りた分返しに来ただけなので。」
財布から万札をいくつか抜いて、あれんの手に忍ばせた。
少ないよりは、多い方がいいだろう。
あれんが普段どんな生活をしているのか俺は全く知らないけれど
迷惑をかけたのは本当だし、余った分はマスターとうまい飯でも食えばいい。
「じゃあな、あれん。邪魔して悪かった。」
俺はいつもこうだ。
無駄に察し能力に長けているせいで
得することは確かにあるけど、それ以上に
自分が今その状況下において、邪魔な存在であると瞬時に気づいてしまう。
すぐに逃げるのは
もう癖になっていた。
俺1人の身勝手な思いで
他の誰かに損して欲しくない。
「ま…待ってください!多いです!雅樹さんも一緒に……一緒に、飲んでもいいです…。」
「…え。」
シャツの裾を握られてしまえば
どこへも行けなくて逃げ場を失う。
俺は…邪魔じゃないのか?
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