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*16-last
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あれんは、10分もしないうちに再び姿を現した。
その手にはもう何も持たれていなくて
マスターに渡せた事がそんなに嬉しいのか、興奮の冷めやらぬ表情のまま、車目掛けて一直線に駆けてくる。
うまく笑えるかな。
よかったなって言ってやらなきゃ。
バックミラーを覗き、引きつる頬を抓って気合を入れた。
が、何故か開かれたのは運転席側のドア。
乱暴に、もし横に車でも止まっていたら思い切りぶつけそうなほど大きく開かれて
冷たい夜風が吹き抜けるよりも先に感じたのは
「っ、好き!!」
俺の胸に飛び込む、あれんの温もりで。
「…ぇえ?あれん?」
「マスターに買ってもらった服、お返ししてきました。
これでやっと、前に進める。
…そう、決心出来たのは雅樹さんのお陰です。」
俺より小柄なあれんが抱きついてきたところで
暖房の効いた車内の温度に慣れていた体が外気に触れれば、少しは寒いと思ってもいいはずなのに
正直、暑い。
熱くて、火が出そうなくらい体温が上がるのがわかる。
「えと…これはその……この前の雅樹さんへの返事、です。
…僕も雅樹さんが好きです、大好きです。」
俺にのし掛かる細い腰を
何かを考える間もなく全力で掻き抱いた。
「……マジか。
くっそ嬉しいっ。」
場所も、温度も
ムードなんかどうでもよくて
表面張力の限度を超えてしまった想いが爆発して、一度溢れたらもう止まらない。
遂に息が出来なくなったあれんに本気のパンチを喰らうまで
抱きしめる力を弱める事はなかった。
────
「…雅樹さん。」
「ん?」
互いに内側の手を絡ませて
渋滞している大通りの信号を待つ。
「僕、やっと幸せの意味がわかった気がします。」
「…そりゃ良かった。」
「だから…これからも、もっと沢山
教えてくれてもいいんですよ。」
なんだそら。
吹き出しちまうとこだったわ。
アクセルに踏み替える直前
俺のと重なるあれんの右手を持ち上げ、そっと唇を当てた。
「空蓮が望むならいくらでも。」
fin.
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