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一章十話 再びのオークション
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闇オークションの会場は六年前と変わりがない。壇上には三人の男が並べられており、全員が全裸だ。
今回は少年以外の子供達は中学生くらいの年齢が多い。年齢別や経験の有無などで分かれて販売されている。
壇上を見上げる客達は下衆な笑みを浮かべている。前回はBランク商品として売られたが、今回はCランク商品として売られる事となる。
六年前にいたメンバーより低俗な人が参加しているであろう、だがそれでも買われなければ臓器売買で殺される事になる。
少年は感情が全くなくなったわけではない。殺される事は恐怖であり、生存本能が働くのは当然の事である。
「皆様のご希望の通り、彼らは使い古された中古品です。大抵の事は経験しているのでどんな扱いも可能です!
では彼から、百万円から参ります」
司会者がマイクで進行していき、一人の男の子にスポットライトが当たった。
何故また売りに出されたのかは知る由もないが、彼の目には生き延びようという意思がまだある。二人目の男の子もだ。
諦めの表情を浮かべているが、まだ絶望はしていない。
二人とも一千万以上の値が付けられた。
だが、少年は……。
「彼は心を閉ざしてしまった可哀想な少年です。普通の生活にも支障が出るので少し手間がかかるところはありますが、何をしても大抵の事は受け入れるので便利な道具になります。
では、五十万から」
シンと会場は静まった。先に買われた二人はすぐに取り合いになっていたのだが、少年の、無表情で本当に生きているのかと思わせる程の無感情に誰もが警戒している。
「五十万!」
だがその中で一人手を挙げた人物がいた。
歳は三十代程で、客の中では一番若い。猛獣をも簡単に殺しそうな筋肉質な肉体に、睨んだだけで子供が泣くだろうというような悪人面をしている。
少年は彼と目が合った瞬間、身震いをした。恐怖だ。本能で感じ取った凶悪さに一瞬だが防衛本能が働いた。
だが一瞬だけだ。すぐに人形然とした態度に戻る。
他に買い手がいなかったので、その男が落札する事となった。
まさか五十万という金額で売られると思っていなかった少年は、別の意味でも恐怖していた。
前回が五千万、今回が五十万……ならば次は?
きっと次はない。価値がなくなったら臓器売買で殺されてしまう。それだけを恐怖していた。
(生きていても辛いだけなのに。僕はなんで生きようとしてるんだろう?)
そんな自問自答の答えは出ない。少年は諦めた様子で、購入した男の元へ歩いていった。
商品を連れて帰る時は裏口から出る事となる。
会場の裏にスタッフのみが立ち入る事の出来る部屋があり、そこで裏で購入者と向かい合う。
「とりあえず服着ろ」
下着とシャツとズボンを渡される。少年は言われた通りそれを着た。
ハイブランドの紳士服店で購入したものだ。素材は良く、着心地の良い素材だ。サイズは適当に持ってきたのか、ダボダボだ。
少年が服を着たのは六年ぶりである。松山に買われてから服など着た事がなかった。その為、シャツのボタンを付けるのに時間がかかる。
それを見かねて男は少年の手を払った。
「貸せ、俺が付けてやる」
少年は立ち尽くした。言われた事に対して反応してはいけないと言われてきた。急にそれを変える事は出来ない。
「服も着れないのかよ」
「彼はあの松山のところにいましたからね、六年程服を着用していなかったようです。本当に大丈夫ですか? と言ってももう返品は出来ませんが」
少年を引渡したスタッフが男に説明をした。
誰もが買わない、むしろ不必要な少年を買って後悔はないのかと。
「松山か……。まぁ面倒っちゃ面倒だが、俺にとっちゃ都合の良い事の方が多い」
男の顔に後悔の様子は無い。むしろ、子供が初めて親に動物を買ってもらったように楽しげだ。
「おい、お前の名前は?」
「……僕は道具なので名前はありません」
「チッ。俺は峰岸だ」
「ご主人様」
「ご主人様じゃねぇよ、峰岸だっつってんだろ」
「峰岸様」
「あー……やっぱ俺の呼び方はご主人様でいいや。ついてこい」
少年は峰岸の後を追った。会場から外に出ると、地面はコンクリートだ。靴下と靴を用意されていない為、裸足のまま外に出た。
「あ! そういや靴を忘れてたな」
峰岸は少年の足元を見ると、太腿から抱き上げ、お姫様抱っこの状態で車の助手席まで連れて行った。
「軽いな、お前。何歳?」
「……十六年です」
「年?」
「製造されて……」
「チッ。やめだやめだ。お前は今まで通り道具だ。但し俺の道具って事忘れんなよ。俺の言う通りにしていれば悪いようにはしねぇし、世話くらいしてやらぁ」
言い方は無愛想だが。少年を思っての言葉だ。道具として生きてきて、心を失くしてしまった彼を無理に人間扱いする方が酷だと考えての事であった。
基本的に峰岸は職場でも部下に対して面倒見の良い、頼れるリーダーなのである。
だが、彼には一つ大きな欠点があった。それが少年を更に苦しめる事になるとは、この時はまだ知る由もなかった。
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