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三章九話 誕生パーティー
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今後も影井と関わる事が出来ると春哉は喜び、帰り支度をし始めた影井を快く送り出そうと玄関に二人きりになった。
「ねぇ影井さん! 僕これからどうすればいいの?」
「どうしたい?」
「そりゃ、ここにいたいけど!」
「うん。家にある君の私物は全部ここに送るよ。詩鶴も毎日ここに来て勉強を教えてくれるって」
「影井さんは? 僕、影井さんいないと寂しいよ、遊びに来てくれる?」
「……それは」
影井はふっと優しい笑みを春哉に向けて話す。
「俺は裏社会に関わりのある人間だ。ご両親が嫌がるだろう」
「え、詩鶴さんだってそうじゃん!」
「彼女は女性だし、そこまで警戒されるような人じゃない」
「でも!」
「春哉。高校に入ったらもう子供の我儘は言えなくなるんだ、君は大人にならなければ。大丈夫、学校行事には顔を出すから」
「分かってるよ。でも、影井さんと会えなくなるなんて聞いてない。酷いよ、僕今日誕生日でさ、影井さんとケーキとか食べたいなーって思ってたのに……」
涙を浮かべる春哉。いつもなら影井が折れているが、今回は折れてくれそうにない。もう会わないつもりなのだと分かってしまう。
その時、母親がニコニコと笑顔で影井に話しかけた。
「あの、影井さん。いつでも春哉に会いに来ていただいて構わないですよ。春哉も影井さんの家に遊びに行ったらいいじゃないの」
そんな提案をした。春哉も影井も一緒に目を丸くして驚いた。
「いいの?」
「だって、あなたの恩人なんでしょう?」
「そうだよ、僕を救ってくれたの」
「じゃあ私達にとっても、影井さんは恩人ね」
「いいんですか?」
影井は眉に皺を寄せて身体を震えさせた。春哉の為に心を鬼にしていたのだ。今後も春哉に会いたいのは影井も同じなのだ。
「勿論よ」
母親は笑顔で頷いた瞬間、影井はぎゅっと春哉を抱き締めた。突然の事で春哉は驚いて「うわっ」と声を上げる。
「春哉」
「影井さんっ! 良かった、良かったよ。僕、影井さんと離れるなんて嫌だ」
「はは、俺もだ」
「へへ、もう影井さんは。こんな事じゃ彼女作れないよ?」
「春哉はそんなの気にしなくていいんだよ」
母親だけでなく、二人の関係を改めて理解した父親も影井を歓迎し、昼食に誘った。
「影井さんも一緒にお昼どうですか?」
「是非」
春哉は十年ぶりに家で両親と食事をした。影井が前日、春哉を連れて帰る事を連絡していた為、料理は豪勢なものだ。
「お父さん、お母さん。僕の好物覚えててくれたんだね」
食卓に並ぶ料理を眺めて春哉は満面の笑みだ。オムライスに、唐揚げ、ハンバーグ、たまごサラダ、ナポリタン、焼きナス、餃子、マグロの刺身……と、統一感なくテーブルに広がっている。
「忘れるわけないでしょう」
「そうだぞ。仕事で春哉を家に一人きりにしてしまった事、ずっと後悔していたんだ。もう家に一人きりにはしないからな」
「大丈夫だよ〜。もう子供じゃないんだから。影井さんのところだと一人でいる事多いもんね」
「そうなんですか。失礼ですが、仕事は何を?」
「経営コンサルタントの会社を経営しておりまして……」
父親と影井はお互いに名刺を交換し合っていた。仕事の話で馬が合ったのか、春哉には理解出来ない話を始めてしまった。
興味がないわけではないが、聞いても仕方が無いので心配している事を母親に聞いた。
「ねぇお母さん、ユウの事覚えてる?」
「優介君の事?」
「うん。僕が誘拐された日、僕ユウに早く帰れって何度も言われたんだ。それなのに僕はユウの言葉を無視したんだ。ユウ、元気でやってるかな?」
春哉が失踪して、ユウが心配していないかが気になっていた。
「優介君、地方の国立大学に進んだわよ。あなたを探す為に探偵になるんだって、法学部に入ったって……」
「えっ!? 会いに行かなきゃ!」
「私から優介君のお母さんに連絡するから、明日会いに行ったら?」
「そうする!!」
まだ昼だがケーキを四人で食べた。春哉にとって最高の誕生日であった。だが、もう陽が落ちてしまったので、そろそろ影井は帰らなければならない。
「じゃあ、また連絡する」
「うん! 明日友達に会いに行くから、帰りに影井さんのマンション寄ってもいい?」
「ああ。明日は夕方には家にいるから」
「うんっ!」
春哉はもう一度影井に抱き着いた。寂しさもあるが、また会えると思うと嬉しい気持ちでいっぱいだった。
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