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三章十話 幼馴染みとの再会
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ワクワクと緊張が治まらないまま、春哉は母親と共に優介のところへと向かった。
電車を乗り継ぎ、有名大学へと辿り着く。
「ユウ凄いなぁ。国立大学って、頭が良い人が行くところでしょ?」
大学の門から中を眺めている春哉が呟いた。母親が優介と連絡を取っており、校門の前で待ち合わせをしているのだ。
「そうねぇ。この大学は特に大学の中で上位の学校ね」
「へぇ〜!」
「そろそろね」
母親は時計を見た。時刻は十六時だ。学校終わりに会う事となっている。ぞろぞろと大学生が出てくるのを見ながら待っていると、一人の青年が出てきた。
黒い短髪に、キリッとした凛々しい目付きをした見た目からして好青年だと思わせる。身長は春哉が顔を上げてみる程高い。
「……は、はる」
「ユウ!」
優介は春哉の顔を見た瞬間、端正な顔を歪ませて涙を浮かべた。そして、春哉を包む様に抱き締めた。
「はる、どこ行ってたの、ずっと探してたよ、ずっと、ずっと。うぅ、ぅぅぅ」
優介は唸り声を上げて泣いた。春哉も一緒に涙を流す。
「会いたかったよ、ユウ。ずっと会いたかった」
優介は春哉と母親をアパートに案内した。一人暮らしをしており、ワンルームの部屋は綺麗に片付いているというより、物が殆ど無い。
必要最低限のものだけで生活している様子だが、本棚には本が敷き詰まっている。
「はる、何があったの? 今までどこにいた?」
「優介君、その事なんだけど」
母親が春哉の代わりに全てを説明した。影井に言われた事をそのまま。
影井に許可も取った。勿論、優介が話を聞いた後の行動によっては、春哉も両親も、影井も優介も全員消される事になりうるが、という脅し付きでだが。
「おかしくないか? いくら社会的地位の高い者が関わっていようが、犯罪は犯罪だろ! まして国内で人身売買なんて……」
「ユウ。僕からもお願い、納得しなくても理解して欲しい。本当は僕達家族だけの秘密なのを何故君に話したのか、それは君にも説明する義務があると思ったからだよ。
ユウの人生を狂わせてしまったのに何も説明しないわけにはいかないから……」
「説明を聞けば俺が引き下がるとでも?」
「真面目なユウの事だからこうなる想像はついてた。けど、このまま誰にも話さず胸にしまって欲しい。本当に危険なんだ。
自分勝手で悪いけど、本当は言うべきじゃないと分かってて君にこの話をした覚悟を分かって欲しい」
春哉の目は、もう子供のような純粋さは無い。一瞬見せた無感情の人形のような目に、優介は希望を捨てて項垂れるしかなかった。
「本当に危険を承知の上で俺に話したのか……?」
「信用してるからね」
「これからは、会いたい時にはると会えるんだよな?」
「もちろん! これからは僕は幸せになれる。もちろんユウも。また一緒に遊ぼうよ!」
春哉の明るい声を聞いて、優介も子供の頃のような無防備な笑顔になった。
「はるってばもう……変わらないなぁ。またリフティングで回数競う? それとも一対一で試合する?」
「うんっ! 昔やってた事、またしようっ」
「今度は家に帰るまで目を離さないからな」
「過保護過ぎだって。もう大丈夫、僕は大人だし、守ってくれる人がいるからね」
影井を思い出すと自然と笑みが浮かんだ。春哉にとって影井とは幸せの象徴だ。思い浮かべるだけで嬉しくなる存在である。
「守ってくれる人?」
「うん、影井さんっていう人でね……」
春哉が照れたように顔を赤くさせると、優介は気の抜けたような声で笑った。
「ふはっ。大変な目に遭ってたのに、呑気に恋愛してたんだ? 元気そうで良かった」
その言葉で春哉は余計に顔を赤くさせる。「レンアイ?」と、頭の中は混乱した。
その反対に母親はすぐに訂正した。
「違うのよ? 影井さんは男性なのよ」
「えっ? あ、すみません、思い込みでしたね」
その後春哉と優介が談笑するだけして連絡先を交換してから帰路に着いた。
春哉は途中影井のマンションに寄り道をして、母親は先に帰る事となった。
「大丈夫? やっぱり私もついて行こうか?」
「だーいじょうぶ! 影井さんいるから安心して」
「あなた、影井さんの事信用し過ぎじゃない? 少し心配よ」
「信用してるところもあるし、してないところもあるよ。
あの人はさ、弱いし、危なっかしいんだよね。僕を助けてくれたのも、本当は不純な動機からなの知ってるんだ」
「そうなの?」
母親は余計に心配した表情を見せる。
「うん。僕の為じゃない、影井さん自身の中の何かを満たす為……ってところ。でもね、それで僕は救われたんだ。
悪い事を正当化しちゃって、自分は直接人身売買に加担してませんって顔してさ〜。悪人の癖にね」
「でもそんな影井さんが好きなのね?」
「うん! 命の恩人だもん! だから、お母さんも安心して。とりあえず影井さんと一緒にいれば僕の身の安全は保証されるみたいだから」
「影井さんのところから帰る時、影井さんの携帯から連絡させてもらうのよ」
「はぁ〜い!」
春哉は母親に腕を大きく左右に振って、行ってきますと笑顔で言い、影井の元へ走っていった。
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