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三章十三話 入学式
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すぐに入学の日はやってきた。春哉は、モカ色のブレザーに赤いネクタイ、紺色のズボンに身を包み、緊張の面持ちで校門をくぐった。
先に先輩達が受付でクラス表と、「ご入学おめでとうございます」と印字されている花飾りを渡してくれる。
周囲の新入生がしているように、春哉も花を胸ポケットに付けた。
最初に入学式があるので講堂に向かう。
周りは中学からの持ち上がりで入学する者が殆どだ。仲の良いグループで行動している為、外部から入学した者は一人で行動している。
親と行動する者はいないので、春哉も外部からの生徒と同じように一人で講堂に入っていった。講堂は大きな壇上とそれに向かって椅子がズラリと並んでいる。二階席もあり、一階の半分の数が並んでいる。
五百人程入る大きさである。
一年生は前の方の椅子に促された。クラス別になっているので、クラス表を確認してAクラスの範囲の椅子に座った。
春哉のすぐ隣に座ったのは、中学卒業したばかりの男の子だ。あどけない顔をしており、内気そうな顔だ。不安からか眉が垂れ下がっている。
「初めまして! 僕、須賀春哉っていうんだよ! 君は?」
思い切って話し掛けてみると、まだ緊張しているのか固い笑顔を見せた。
「は、はじめ……まして。ぼ、僕は、山下康平っていいます」
「緊張してるんだね? 大丈夫、ここにいるのは皆同じ歳の、同じ立場の人達だ。僕も緊張してるんだ〜」
話しだすと緊張が解れる。十年ぶりの学校生活が始まるのだ、緊張しているのは春哉も同じである。
「でも、やっぱり内部生と外部生だと立場は違うんじゃないかな? 僕外部生だから、輪に入っていけるか不安なんだ」
「僕も外部生だよ! じゃあ僕が高校で初めての友達?」
「そ、そういう事になるのかな」
「なるなる! 僕、山下君が初友達だよ〜」
嬉しくなってグイグイ話し込むが、すぐに式が始まった。全員が口を噤み、会場は静かになった。
入学式は校長先生の式辞から始まり、理事長の挨拶、在校生の挨拶、新入生の挨拶、一年生の担任教師の紹介など、二時間ほどで終了した。
その後、教室へと全員で移動した。春哉は山下と共に移動をする。
「話長かったね〜」
「校長先生の話が特に長かったなぁ」
同意を求めてきた山下に対し、春哉は頷きながら入学式を思い返した。
「えー? 理事長も長くなかった?」
「そう?」
理事長は峰岸の父親だ。どんな人物なのかと春哉は観察するように見ていた為かあまり長く感じなかった。
「そういえばさ、須賀君ってどこから来てるの? 中学はどこだった?」
「隣の県からなんだよ。六つ先の駅の近くだよ。中学は通ってないんだ〜。病気で自宅療養してたの」
「そうなの!? それでこの学校受かったんだ、凄いね。もう身体は大丈夫なの?」
「うん、もう運動も出来るよ! なに、この学校って自宅療養してると合格難しいの?」
「そりゃそうだよ、進学校だよ? 皆国立大学とかSランクの大学目指してる」
「へ、へぇ〜。そうなんだ。僕、家庭教師の人に教わった通りに勉強してただけなんだけど」
「相当腕の良い家庭教師なんだね! 今度僕にも紹介してよ。うちの親なら喜んでお金出すよ」
「あ、家庭教師が本業じゃないんだよ。僕の知り合いの友達で。家庭教師頼めるか聞いてみるね」
「お願いします!」
さっきまで大人しかった山下が、興奮した様子で家庭教師を頼んでいるので、無下に断れない。
その話を、家に帰ってから家庭教師としてやってきた詩鶴にすると──。
「友達出来たんだね!」
「うん! イエーイ」
「イエーイ」
春哉と詩鶴は頭上でハイタッチをして喜んだ。
「でもなぁ、他の子の家庭教師は難しいんだよね。春君の家庭教師に影井さんから月三十万もらっててさ〜。手は抜けないんだよねぇ」
「え? 影井さんそんなに払ってるの?」
「そうよ〜。まぁ浩二さんの手前出さざるを得ない感じだけどね」
「浩二さん?」
急に出てきた知らない人の名前に、春哉は首を傾げる。
「私の飼い主。あなたを売ってた組織のトップよ」
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