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そこから先の記憶は、断片的にしか残っていない。導き、導かれ、逃げ込んだ先のバスルームでも火のついた身体を持て余してペニスに手を伸ばし、すぐさま押し入ってきたのは父親か息子かそれとも両方か。
目覚めたとき、身体が清潔な状態だったのは奇跡と言えるかもしれない。静寂もまた恩寵だ。どろどろの煎餅布団から身を起こした時、親子の姿は既になかった。
スマートフォンで確認した達夫からのメッセージは簡潔極まりない。
「彰を送ってくる」
それだけで十分だった。男がもう帰ってこないと、消え失せた手荷物を確認するより先に知る。
別に彼が、あの可哀想な少年を選んだことを云々するつもりはない。そもそも最初から期待などしてない。
感情の処理をひとまず終えれば、残されたのは肉体の問題だった。痛む目の奥にそれ以上液晶を眺めるのを止め、譲治は枕に突っ伏した。本格的に風邪を引き添えたらしい。頭の奥でがんがんと銅鑼でも鳴らされているかのようだった。熱と言えば取り返しの付かないほど上がって、寒気も喉の痛みも耐えきれない。
ふと視界の端に入った風邪薬と、ミネラルウォーターのペットボトルが、この上なく憎らしい。そう、心底憎らしい。浮かんだ情を踏みつけに出来るくらいには。
むくんだ手で引ったくると、譲治は苦い錠剤を生ぬるい水で流し込んだ。
終
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