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4.玲の正体
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「ちょっと曲作りに行き詰まっててー」
「行き詰まってでAVを見るな!だいたい、お前未成年だろ!まだ早いわ!!」
リビングに移動し、何人掛けかも分からないほどの大きなソファーに春と綾人は並んで座ると、雑多に置かれた雑誌やノートパソコンなど、物で溢れた向かい側のソファーに、ネクタイを緩めた制服姿の少年は座った。
「えー。でも、未成年だって、仕事の資料として準備されたものを見ているなら、よくない?」
体育座りのように足を抱えながらソファーに座った少年は、春が何故怒っているのか理解出来ないといった様子で、小首を傾げた。
「よくない!AVがなんの資料になるっていうんだ!」
「愛…?」
「…お前の周りの大人はバカか!てか、お前が本当に、あの『玲』なのか?」
「だから、さっきからそうだって言ってるじゃん。もう、ハルちゃんは疑い深いなぁー」
玲だと名乗る少年は、髪は金色に近いほど明るくし、耳には赤い石のピアス、顔立ちは整っているがどこか幼さが残っており、どこからどう見ても現役高校生だった。
「…。信じろって方が無理だろ…」
「ブーブー」
(ついていけねー…)
子供のように頬を膨らませて拗ねた顔をする玲に、春は会話に疲れて溜め息が漏れた。
「お前って…。制服姿だけど、本当はいくつなんだ?玲がデビューしたのは去年だよな…」
「十六だよ。だから、ハルちゃんとはそんなに変わらないよ」
「本当に現役男子高校か…。って、変わるわ!四つも違うんだぞ」
「もう、ハルちゃんは細かいんだからー。そんなこと気にしていると、余計老けちゃうよ」
「…。そうだな…」
(ダメだ…。完全に、この玲ってやつのペースだ…)
春はソファーの背凭れに体重を預け、お手上げといった様子で力が抜けたように天井を見上げた。
そんな春に変わって、黙ったままだった綾人がやっと話し出した。
「玲さんは…」
「玲でいいよー。あっ!」
玲は何かを思い出したかのように、無造作にソファーの上に置いてあったノートパソコンを膝の上に置くと、弄り始めた。
「…。玲は、どうして俺たちに曲を作ってくれるんですか?」
「そんなの、二人に僕の曲を歌って欲しいからに決まってるじゃん」
ノートパソコンのディスプレイを見ながらカタカタと音を立てて何かを打ち込み始めた玲は、綾人と話しながらも手を休めなかった。
「それって…。俺たちのデビュー曲を聴いて、気に入ってくれたってことですか?」
綾人の質問に、玲は急にキーボードを叩く手を止め真剣な目の綾人を見ると、お腹を抱えて笑い出した。
「あっはっは!違う、違う。あんなのが、気に入るわけないじゃん」
「えっ…」
(あんなのって…)
半年近くかけて準備してきたデビュー曲のことを玲に大声で笑われ、春は言葉が出なくなるほどショックを受け、思わず指先が震えた。
「…。どういう意味で、あんなのっておっしゃるんですか?」
そんな春とは対照的に、いつも通り落ち着いたまま玲に話しかける綾人に、春はさらにショックを受ける。
(やっぱりお前にとって、デビュー曲のことなんて、どうでもいいことなのか…。綾人…)
春は指先の震えを綾人から隠すように、親指が痛いと感じるほど、きつく拳を握った。
「どういう意味も、そのままの意味だよ。だいたい、綾人君だって、別に思い入れがあるわけじゃなんでしょ?だからそんな」
まるで春の気持ちを代弁するように玲が話し始めたため、春は居てもたってもいられず、向かい合うソファーの間にある机に片手を着き、反対の手を伸ばすと、玲の胸ぐらを掴んだ。
「お前に何が分かる!それ以上…っ!!」
広いリビングに響き渡った春の声は、途中で止められてしまった。
それは、玲が春に唇を重ねたためだった。
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