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7.はじまり
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「お前も浴びてこいよ」
キングサイズのベットに腰掛けていた綾人に、シャワーを浴び終えバスローブ姿で戻ってきた春は、目を合わせないように軽く俯きながら声をかけた。
「春…」
「ほら、さっさとしろよ」
(お前の気持ちが変わらないうちに…)
「…分かった」
綾人は静かに頷き、腰掛けていたベッドから立ち上がると、春の横を黙ってすり抜け、ベッドルームを出て行った。
そんなやり取りを、窓際に置かれたリクライニングチェアーに呑気に体を預けていた玲が、ニヤニヤしながら台本を片手に持ち、こちらを見つめていることは、嫌でも春の視界に入っていた。
「何か言いたげだな」
「うーん。ほんと、ハルちゃんは素直じゃないなーって。本当は好きなんでしょ?綾人君のこと」
玲の口ぶりから、確信をもっていることを理解した春は、これ以上隠してもしょうがないと開き直ることにした。
「だったら、なんだって言うんだよ。オレが勝手にアイツのことを思っているだけだ。…楽しいかよ?こんなオレに、お前の目の前でセックスさせて」
「楽しい?うーん、ハルちゃんは楽しみじゃないの?」
無邪気に笑いながら質問をしてくる玲に、春は気持ちを苛立たせながらベッドに勢いよく腰かけると、スプリングが軋む音が響いた。
「楽しみなわけないだろ!どうしてこんな…」
「えー…。僕のせいにしないで欲しいなー。誰に抱かれるか選んだのは、ハルちゃん自身だよ」
玲はリクライニングソファーから立ち上がると、床に台本が落ちてしまうが、玲は拾うことなく春にゆっくりと近づいていった。
「未成年となんか出来るかよ。見せるのだって、曲の話がなきゃ…」
「…。ハルちゃんの嘘つき…」
ベッドに腰掛けていた春の目の前に立った玲は、春の顔に手を伸ばすと、指先で春の目の下を軽くなぞった。
「本当は、綾人君が欲しくてたまらないくせに。どうせ、自分の気持ち伝えたら関係が壊れちゃうとか思って、言えずにいるんでしょ?あー、くだらない」
「くだらないだって?」
春は自分に伸ばされていた玲の手首を手で掴むと、力を込めた。
「オレの気持ち伝えて何か変わるのかよ。綾人は…オレのためにアイドルとしてデビューしてくれて…。でも、そのせいで自分の夢を諦めて…。オレが気持ち諦められないから、こんな風に縛り付けて…。こんなオレの気持ちなんて許されるわけ…」
ずっと隠していた言葉と抑えていた感情が溢れ、掴んでいた玲の手を振り払うと同時に、春の目から思わず一粒の涙が零れた。
「…ッ」
春の流した一筋の涙を見た玲は、痛いほど強い力で春の両肩を掴むと、そのまま力を込め、春をベッドに押し倒した。
「玲…?」
見上げる形になった玲の顔が、今にも泣きだしそうな悲痛な表情に春の目に映ったため、春は無意識に玲の頬に手を伸ばしてしまう。
だが、その手は玲の頬に触れる前に、玲は春から身体を離した。
「ハルちゃんは残酷だね。綾人君の夢も、そうやって、その涙で捨てさせたしね…」
玲の言葉に、春は慌てて上半身をベッドから起き上がらせると、思わず息を飲んだ。
「どうしてお前がそんなこと知って…」
春は驚いた顔で玲を見つめると、玲は先程の悲痛な表情が嘘みたいに笑みを浮かべていた。
だが、その目は笑っておらず、春は背筋に冷たいものが走るような感覚と恐怖を感じた。
「玲…お前…」
春は何か言いかけるが、シャワーを浴びた綾人がバスローブ姿でベッドルームにちょうど戻ってきたため、そのまま言いかけたまま黙ってしまう。
「あっ、綾人君おかえりー。それじゃあ揃ったことだし、二人には始めてもらおうかなー」
まるで、楽しい遊びが始まる子供のように声を弾ませ、玲はキングサイズのベッドの枕元に移動して腰掛けた。
「僕は手を出さないから、新曲のためにも二人で頑張ってね」
そう言って、玲はまた楽しそうに満面の笑みを浮かべた。
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