アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3.玲
-
社長から受け取ったメモを頼りに辿り着いたのは、駅から少し離れた場所に位置する高級住宅街の外観は普通なマンションだった。
だが、持っていたカードキーで中に入ると、マンションの入り口から部屋の前に到着するまで何重ものセキュリティが張り巡らせられており、まさに芸能人御用達といったマンションだった。
しかも、エレベーターにカードキーをかざし自動で到着したのは最上階で、降り立ったフロアには玄関が一つしかなかった。
「これって、噂のペントハウスってやつか…?オレ、初めて本物見るぞ…」
春は物珍しくて、辺りをキョロキョロと見渡してしまう。
その間に、綾人は臆することなく、扉の横にあったインターフォンを押した。
扉の向こう側で響くチャイムの音で、綾人が勝手にインターフォンを押したことに気が付いた春は、思わず身体を緊張させるが、いくら待っても中から反応はなかった。
「留守…なのか?」
春は身体の力を抜き緊張を解くと、首を傾げた。
すると、綾人は黙ったままカードキーを取り出すと、ドアノブにかざして鍵を開けた。
「お、おい!そんな勝手に…」
綾人の大胆な行動に、春は思わず動揺してしまう。
「ヘッドフォンしていて、気付かないのかもよ」
「あ、それでカードキーをわざわざ送ってきたのか」
春が綾人の言葉に納得した理由は『作曲家』である『玲』に、ここへ呼ばれたからだった。
去年、突如現れた玲は、たった一年で数々のヒットソングを生み出し、今や玲の手に掛かれば、どんなものもヒット間違いなしと言われていた。
だが、そんな玲はメディアへの露出はもちろん、アーティストとも顔を合わせることはないらしく、誰も素顔を知らない謎の存在とされていた。
そんな玲が、社長に直接『Aries』のセカンドシングル作成を今朝打診し、提示された唯一の条件が、春と綾人の二人で自分に会いに来ることだったと二人は社長に聞かされた。
綾人は玄関の扉を開けると、春の手を引くようにして中に入った。
二人が中に入り扉が閉められると、オートロックだったため、背後で鍵の閉まる音だけが静かに響いた。
春はこれ以上、人様の家に勝手に上がることに気が引け、黙って待つことにしたが、誰かが出迎える気配はやはりなかった。
「んっ…?」
痺れを切らして大声で声を掛けようとした春だったが、奥から微かに女性の泣き声のような高い音が聞こえてくることに気がついた。
(もしかして、何か事件でも…!)
そんな想像が頭を過ぎった春は、慌てて靴を脱ぎ、音を頼りに大理石で出来た廊下を足早に進んでいくと、右手にある扉から先ほどの音がしていることに気がついた。
「待った、春…」
「えっ?」
綾人の静止する声より先に、春は部屋のドアをノックせずに開けてしまう。
「なっ…!」
春は目にした光景に驚き、口を開けたまま固まってしまった。
『アッ!ンァッ…!ダメェ…!!』
壁一面に広がる大きさのスクリーンには女性の裸体が映し出らされ、スピーカーからはセリフではなく、甲高い喘ぎ声だけが大音量で響き続けた。
部屋はシアタールームであったが、スクリーンに映し出されていたのは映画のワンシーンで繰り広げられる濃厚なベッドシーンではなく、AVだった。
「あっ、来てくれたんだ!やっほー、ハールちゃん」
スクリーンの前に置かれた革張りのソファーから振り向いて手を振っていたのは、明らかに春や綾人より年下でブレザーの制服を着た少年だった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 10