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蝶
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部屋を目指している最中、カードキーは受け取ったものの不安で頭の中はぐるぐるしていた。
俺はこれからどうするんだ?
部屋を用意してくれる、って俺は住人になるのか?
まぁ、帰る場所もないけど。
俺みたいな奴を置いといて不安じゃないのか?
得体もしれない、俺なんか置いて。
メリットなんて皆無だろ
なんてぐるぐる考えながら気付いたら部屋の前まで来ていた、みんなの部屋も側だ。扉には表札がつけられていて、犬の足跡と、【⠀パピ4 】と描かれていた。
「4・・・。」
センスの塊か、ただの変換ミスか。
カードキーを差し込むと、ガチャっと空いた。
目の前に広がるのは窓から入ってくる暖かな日差しと、ふわふわ系の部屋、ベッドは無く、代わりにクッションやソファーが置いてある。
クローゼットや机と椅子もあった。
玄関マットで裸足の裏を綺麗にして、そっと、敷かれているふわふわした布を踏んであるく。
なんて柔らかい。
ふわふわが無い場所にはトイレとシャワー室があった。
地下のはずなのに窓から日光ってなんだ、と見たら画像が貼ってあって中から強い光のライトが仕掛けられていた。なるほど。
何この世界、本当に俺の部屋?
十分な広さの部屋の角にちょこん、と座る。
眠たさもあったが、それより気になるのがあった。スラム街の奥の村、まさかと思うが場所も場所だ、ジーグが旧軍の火薬と言っていたが、そこにも逃げてくる最中、何かの荷車に隠れて川まで逃げて……。
思い当たる節しかない、村が落とされたなら、あいつらは居ないかもしれない、俺と同じ扱いを受けてる奴らを助けられるかもしれない。
シアンとジーグ、あの場所を追えるかな。
俺は集中して、蝶複数を飛ばした。
久々に使った能力は緩やかに上昇して直ぐにシアンとジーグを見つけた、2人は別行動でそして他の人も引き連れて情報収集もしていた。
そして、キャラバンの人も見つけた、話を聞くに仲間が囚われてると言うのは本当にだった。
かなり遠い場所、あの村は閉鎖され、見張りが立っていた。
村の中央の広場には捕まった人が縛られて集められていた。
施設で過ごした時の顔見知りは居ない。
記憶を辿り施設へ、確かにそこには施設があったが、建物が壊されていて、戦火に巻き込まれた事がよく分かる。
隙間から中へ入る、ゲートも何もかもが壊されているか、機能していないようで、セキュリティは死んだようだ。
更に奥に行くと、白い服の死体が転がり始める、あたりは血と焦げた嫌な匂いが立ち込めていた。
見覚えがある扉がいくつかある、あの調教部屋と檻の部屋。
調教部屋は複数あったようで、部屋の中で交わってる最中に殺された奴もいた様で、吐き気が込み上げてきた。悲痛な顔をした少年の遺体だけが転がっている部屋もあった。性欲のはけ口に使われた少年少女達の生々しさが残る部屋ばかりで・・・
気分は最悪だ。まるで悪夢。
そしてみんなが囚われていた檻の部屋。
転がる死体は新しいのにドアノブに積もる埃、長年その扉が使われてない事は丸わかりだ。ドアには開放厳禁の文字。見ない方がいいと、俺の中で声がした。
だけど、通過した。
「オェッ…うっ」
蝶とのリンクを切り、急いでトイレに駆け込む、消化されていた食べ物が競い合って胃から出ていく。
ひとしきり吐いた後、悲惨な光景に泣いて謝る事しか出来なかった。
そのまま蝶へまたリンクし、シアンとジーグの部隊が村へ行き、戦う姿を見て、囚われた人を救うまでの流れを見守った。
時間はもう夜になっていた。
アリアが一緒に寝ようと迎えに来たが大丈夫だとドア越しに断った。
なんせ体調は最悪だ、吐いても止まらない吐き気と頭痛。
シアンとジーグが話し出した。
「村は取り返したな」
「あぁ、だがキャラバンの長がまだ見当たらないらしい」
「もう夜だ、探すのは明日にしてこいつらもよく戦った1度帰るのがいい」
「わかった。ふふっ」
「んーだよ突然、頭おかしくなったか?」
「いや、蝶を今日はよく見るなって。」
「そうか?」
「パピヨンって犬の犬種でもあるけど、意味が蝶って意味でもあるんだ。だからなんだか嬉しくてね」
「はーん。蝶ねぇ。お前が大好きなちょうちょなら、壊れた建物から飛んでったぞ。」
「巻き込まれたのか、可哀想に。中に人が居るかもしれない、そんなに大きい建物じゃないし部隊は先に返して私らは少し探そう」
「しゃーない。」
シアンとジーグは施設を詮索していく。
止めたかった、知られたくなかった、こんな場所なんて
「シアン、この建物普通じゃないぜ」
「そうだな」
やめて、やめて、見ないで。それ以上進まないで。
調教部屋も開けて見た2人はこの施設で何が行われていたか悟る。
「狂ってやがる」
「子どもたちがこんな目に・・・」
2人が立ち止まったのは開放厳禁の扉の前。
扉に手を伸ばす2人。
「ダメーーーーッ!!」
思わず叫んで、シアンの伸ばした腕に蝶がとまる。
「えっ?」
カチャーー。ギィィ
シアンは、止まったがジーグが開けてしまった。
「嘘だろ・・・」
「・・・・・・。」
2人の目に飛び込んできたのは檻の中に詰め込まれた子どもたちが餓死している姿だった。
シアンの耳にはすすり泣く声が聞こえるが、あいにく生きている子は居ない。
腕に泊まる蝶に問いかける
「パピヨン・・・なのか?」
《 うぇっ…ひっうぇぇーーん》
「パピヨン・・・」
「シアン狂ったか?」
扉を閉めて、不思議そうにみてくるジーグに腕の蝶を触らせると、パピヨンの咽び泣く声が聞こえたみたいで一瞬ビクッとしたが、理解する
「パピー・・・今から帰るから、帰ったらお話しようか」
泣き続けるパピヨンの声、しばらくしたら蝶が消えてしまった。
「まさか本当にパピヨンかよ、蝶。」
「そうだね、なるほど潜在能力、かな。・・・ここの子どもたちは後でちゃんと弔ってやりたい」
「そうだな」
帰路を急いだ。
パピヨン、きっとここから逃げてきたんだな、村の話でビクついたのも、抜く時おしりを触っていたのも、これで納得。
少しわかりづらい所あるし、パピヨンは隠そうとするから気付きにくいんだ。
横になるのが嫌なのもここが原因なのかな?
あんなに号泣してるの初めて聞いた。
とりあえず帰ったら落ち着かせてあげないと。
子どもなのに沢山背負ってきてたんだね、パピー、偉いね。気付いて上げられなくてごめんね。
私も反省しないと、話してくれるのを待つのも大事だけれど、パピヨンみたいな子には状況で私から聞かないといけないな。
「ジーグ、子育てって難しいな」
「俺からしたらお前も子どもだわ、あぁ難しい、難しい。」
「褒め言葉として受け取ろうかな」
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