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side尚:失くしたもの
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ーー
彼に出会ったのは、中学に上がってすぐの頃。
その頃の僕は、常に出来のいい兄と比べられて、何を頑張っても兄のようにはなれず、家族には失望され、周りには馬鹿にされて、次第に頑張るのこと辞めていた。
自分に自信なんかなくて、周りと関わるのも臆病になっていた。
彼と知り合ったのは、席が近くで彼が何度も僕に話しかけてきたからだった。
最初はそんな彼が面倒で、話しかけてくる度に冷たく当たっていた。
冷たく当たれば、俺なんか直ぐ嫌いになってどっかに行くはず。
早く僕のことを嫌いになってどっかに行けばいい。
そう思っていた。
でも彼は、僕のことを嫌いになるどころかますます頻繁に話しかけてきて、いつの間にか彼と一緒にいるのが日常になっていった。
そうして日々を過ごし彼を知って行くうちに、僕は彼をほっておけなくなっていった。
彼は、自分のことには酷く無頓着だった。それなのに他人の痛みに敏感で、気づくと無茶をする。
そしてふとした時に、何もかも諦めたような、寂しい表情するのだ。
僕はそんな彼を守って上げたかった。
けれど、ある日を境に彼は変わってしまった。
僕に何度冷たくされても諦めずに話しかけて来た明るさも、つられて笑ってしまうような笑顔も、何もかもが無くなってしまった。
残ったのは、他人に優し過ぎるところと気づくと無茶をしてしまう所だけ。
僕は、彼が無くしてしまったものを取り戻してやりたかった。
取り戻すためならなんだってやった。
でも、僕じゃダメだった。
.......だから、彼を大切に思ってくれる僕じゃない誰かに任せることにしたんだ。
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